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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年4月8日

何ゆえ、ふきんを
ティータオルと呼びますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

ここのところ、ロンドンではとても気持ちのよい晴天が続いており、先週末は久々にリッチモンドパークで乗馬を楽しんでまいりました。木々の芽吹きを馬上から眺めながら、馬と一体になって木立のあいだを駆け抜けておりますと、まるでわたくし自身が春風になったような心地がし、心身ともにリフレッシュできました。やはり春の乗馬は格別でございますね。

さて、本日もまたひとつご報告したいことがあり、筆をとりました。

先日、エドワーズご夫妻のご友人が遊びにいらして、一緒にお茶をいただいたときのことです。そのご婦人はイースター休暇を湖水地方で過ごされたそうで、「素敵なデザインがたくさんあったので、つい目移りしてしまって。たくさん買ってしまったから、もしよろしければどうぞ」と、花と小鳥があしらわれた可愛らしいティータオルをプレゼントしてくださいました。ひと目で気に入り、とても嬉しく思ったのですが、正直なところ使い方がよくわかりません。ご婦人が帰られた後、エドワーズ夫人に尋ねてみました。

エドワーズ夫人のお話では、どうやらティータオルとは日本の「ふきん」のようなものとのこと。主に食器などを拭くときに使うそうですが、そのほかにもテーブルクロスの代わりにしたり、ティーポットの保温やお皿に盛ったお菓子が乾燥しないよう上から被せたり、デザインによってはインテリアとして壁に飾ったりすることもあるのだとか。用途が多様でとても便利なので、エドワーズ夫人も旅行先でお土産としてティータオルをよく購入するとおしゃっていました。それにしましても、紅茶というよりもキッチンに関連する商品のようですが、一体なぜ「ティータオル」と呼ぶのでしょう? 疑問に思いましたので、調べてみることにいたしました。

いくつか資料をあたりましたところ、ティータオルの発祥は18世紀の産業革命時代にさかのぼるようです。裕福な家庭で陶磁器製のティーポットやティーカップ&ソーサーなどを磨くために使われた、リネンの布地がその起源とのことでした。陶磁器や銀食器といった高級な食器類を扱う仕事を任されることは、当時の使用人にとって大変な栄誉だったそうで、ティータオルも丁寧に洗濯され、大切に使われていたのだとか。ティータオルを数多く所持するのが財政的な豊かさを示す、一種のステータスでもあったようです。

デリケートな食器にキズをつけないように、もともとはリネン生地でしたが、現在はコットン生地が多くなっているとのこと。使用方法もさまざまに工夫されるようになりました。そういえば、以前、ロンドンのあるホテルでアフタヌーンティーをいただいた際に、お皿にのった焼きたての温かなスコーンが、布に包まれて運ばれてきたことがございました。あの布もティータオルだったのですね。日本ではまだあまり知られておりませんので、次に帰国するときにはお土産にティータオルをたくさん買って帰りたいと思っております。楽しみにしていてくださいませね。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年4月4日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年半。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。
 

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