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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年5月13日

何ゆえ、ウェディングドレスは白色と決められていますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

先日、友人のソフィア嬢と一緒にハンプトン・コート宮殿に行ってまいりました。ヘンリー8世やエリザベス1世に扮した役者さんたちによるパフォーマンスを楽しみながら、宮殿内をのんびりと見てまわっておりましたところ、人だかりができているのが目に入りました。

「何かあったのかしら?」と好奇心を抑えきれずに近づいてみますと、真っ白なウェディングドレスと長いヴェールを身にまとった女性と、黒のタキシードを着た男性が、螺旋階段でポーズをとっているではありませんか! どうやら結婚記念写真の撮影のため、『通行止め』になっているようでした。まるで映画の一場面を見ているかのような美しさに、思わず溜め息が出てしまいました…。

ところが、ふと隣を見ますと、ソフィア嬢は何やら冴えない表情。「どうしてウェディングドレスは白なのかしら…。できれば大好きなロイヤルブルーのドレスを着て挙式したいわ」とポツリ。言われてみれば、花嫁が結婚式で着るウェディングドレスは白色という習慣は、一体なぜ生まれたのでしょう? 調べてみることにいたしました。

いくつか資料をあたりましたところ、どうやら白いウェディングドレスの起源は、ヴィクトリア女王にあるとのこと。昔は、王族や上流階級の婚姻は政治的な意味合いを含んだものが多かったため、女性は赤、青、緑などの鮮やかな色彩のシルクやベルベットの布地に、金銀糸の刺繍を施した豪華な婚礼衣装を着て、家の経済力や社会的地位を誇示したそうです。歴史上で最初に「質素」とも言える白いドレスを身につけたのは、デンマーク王のもとに嫁いだ、イングランド王ヘンリー4世の娘フィリッパ・オブ・イングランドで、1406年のことだとか。また1559年にも、のちにスコットランド女王となるメアリー・ステュアートが、フランスの皇太子との挙式で、彼女がもっとも好んだとされる白のドレスを着たという記録があるようです。

19世紀に入っても、ウェディングドレスの色は特に定められておらず、ヴィクトリア女王は自身の婚礼ドレスを決めるのに、多くの時間を費やしました。彼女がこだわったのは「すべて英国産」であること。産業革命で急激に向上していた生産力のさらなる促進を目指すとともに、自身が広告塔になることによって、その技術力を世界へ宣伝しようと考えたのです。女王はロンドン東部のスピタルフィールズで織られた白いサテンの生地をドレス本体に使い、デヴォンで編まれた繊細なホニトンレースをドレスの飾りとヴェールに用いました。また、ティアラの代わりに豊穣と多産のシンボルであるオレンジの花を頭に飾り、アクセサリー類は最小限にしてシンプルに仕上げたそうです。

この結婚式は大々的に取り上げられ、王族には珍しく恋愛結婚であったことから、女性たちの憧れとして白いウェディングドレスが大流行。これ以降、ウェディングドレスは白色という習慣が定着し、ヨーロッパにも広がったようです。久々に「大英帝国」の底力を実感いたしました。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年5月9日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年7ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

 

 

 

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