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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年7月28日

何ゆえ、英国の横断歩道は動物の名前がつけられておりますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

先週末、セント・ジョーンズ・ウッド駅近くのアビーロードにある、英国でもっとも有名な横断歩道へ行ってまいりました。お父様もご存知のように、1969年に発売されたビートルズのアルバム「アビーロード」のジャケット写真に使用されて一躍有名になった場所です。今も世界中から多くのビートルズ・ファンが足を運ぶ「聖地」のひとつで、わたくしが友人と一緒に訪れた日も、ジャケット写真と同じポーズで写真撮影をする人々でにぎわっていました。

実はこの横断歩道は2010年、特別な歴史を有する、または建築的に重要と判断される建物が指定される「リステッド・ビルディング」(グレードII)に登録されたそうなのです! 建物ではなく、横断歩道が歴史的遺産に指定されたのは、英国初とのこと。よい機会ですので、英国の横断歩道事情について調べてみることにいたしました。

資料をあたりましたところ、大変興味深いことに、英国では横断歩道の種類ごとに「動物(または鳥)の名前」がつけられていることがわかりました。

日本でもお馴染みの白線で縞模様が描かれたものは、英国では歩行者優先の横断歩道なのだとか。「ゼブラ・クロッシング(Zebra Crossing)」といい(ゼブラはシマウマのことです)、この横断歩道には歩行者用の信号機が設置されていません。代わりに、点滅する黄色い球体型ランプがついたポールが立っています。このランプは、運転者に「歩行者優先の横断歩道が近づいていますよ」と注意を促すものとのこと。アビーロードの横断歩道は、これにあたります。

次に、歩行者用の押しボタン式信号機のある横断歩道を「ペリカン・クロッシング(Pelican Crossing)」と呼びます。横断歩道の左右の端に点線が引かれているだけのシンプルなもので、日本と同様に歩行者用信号が青になってから渡ります。この押しボタン式信号機は「WAIT」と文字が浮かぶ旧式(ペリカン・クロッシング)以外にも2種類あり、赤と青色の人間のシルエットが浮かぶ信号機のある横断歩道は「パフィン・クロッシング(Puffin Crossing)」(パフィンは海鳥のツノメドリです)、これに自転車マークが加わった信号を備える横断歩道は「トゥーカン・クロッシング(Toucan Crossing)」(トゥーカンは中南米の鳥オオハシのこと)と、区別しているようでした。

そして最後が、乗馬者用の「ペガサス・クロッシング(Pegasus Crossing)」。この横断歩道は乗馬コースとなっている道路などで見られ、信号機には馬に騎乗した姿のシルエットが表示されます。

シマウマ、ペリカン、ツノメドリ、オオハシ、ペガサスなど、バラエティ豊か。なぜ名称に動物や鳥が用いられたかについては、どうやら最初に名付けられ、人々のあいだで浸透していた「ゼブラ・クロッシング」に関連させて覚えてもらおうと、各横断歩道の正式名称の頭文字のつく動物・鳥が選ばれたとのこと。たとえば、「Pedestrian Light Controlled Crossing=Pelican Crossing(ペリカン・クロッシング)」という具合です。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年7月26日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年10ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。
 

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