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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年8月11日

何ゆえ、カフェのパニーニにはナイフしか添えられませんの?


徳川るり子

愛するお父様へ

お父様、暑中見舞いのお便りをお送りいただき、誠にありがとうございました。おばあ様やお母様からの温かい言葉も書き添えてあり、とても嬉しく思いました。暑気払いに軽井沢の別荘へ行かれるとのお話でしたが、道中どうぞお気をつけくださいませ。さて、本日もまたひとつ、英国で興味深く思いましたことをご報告いたしますね。

先週、友人のジュリア嬢と一緒にマリルボンへショッピングに出かけました。可愛い雑貨屋さん、美味しいエクレアやチョコレートのお店などをめぐった後、少し足を休めようとコーヒーショップに入ったときのことです。

わたくしはカフェラテとともに、チョコレート・マフィンを注文したのですが、店員の女性が差し出したお皿の上にはマフィンと「ナイフが1本」だけ。フォークがないのです。わたくしは彼女がフォークを渡し忘れたのだと思い、「フォークをいただけますか?」と尋ねると、彼女はとても不思議そうな表情。実は、これは初めての経験ではなく、別のカフェでも度々こうした状況に出会うのです! その後、ジュリア嬢が注文した熱々のパニーニがテーブルに運ばれてきた際も、やはり店員の方はナイフしか用意しておりませんでした…。スコーンなどの場合、クロテッド・クリームやジャムをのせるためにバターナイフが添えられるのは理解できますが、一体なぜマフィンやパニーニ、トーストにもナイフを添えるのでしょう? もし切り分けるためのナイフだとすれば、フォークも準備するべきではないでしょうか? 疑問に思いましたので、調べてみることにいたしました。

カフェ・チェーンのひとつ「コスタ」に問い合わせましたところ、興味深いお話をうかがうことができました。丁寧に対応してくださった広報の男性によりますと、マフィンやパニーニ、トーストなどは「フィンガー・フード(finger foods)」とのこと。サンドウィッチと同じように、そのまま手にとって食べるのが普通なのだとか。ただ、サイズの大きいマフィン、焼きたてで熱いパニーニやトーストについては、切り分けて口に運びやすいように、カフェの「サービス」としてナイフを添えているのだそうです! 手でいただくものですので、フォークはいらないのですね。

では、バーガーはどうなのでしょう? レストランやパブでバーガーを注文いたしますと、ナイフとフォークの両方が添えられます。バーガーはフィンガー・フードではないのでしょうか?「コスタ」の広報の方は「門外漢ですので、詳しいことはわかりませんが…」と前置きしながらも、オープン・サンドウィッチ(パンの上に具材をのせたもの)やソースなどが絡められた「手が汚れる」サンドウィッチ等は、フィンガー・フードであってもナイフ&フォークで食べることは珍しくないとおっしゃっていました。たとえば、バーガーの場合は半分に切り分けた後、そのままナイフとフォークで食してもよし、あるいは手にとっていただいてもマナー違反ではないようです。大変勉強になりました。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年8月8日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年10ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。
 

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