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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年9月8日

何ゆえ、ロンドンではオープンハウスが行なわれますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりございませんでしょうか? 本日もまた、新たに知りました英国の習慣についてご報告したく、筆をとりました。

先日、英語学校の友人に「クラスの数人で、オープンハウス・ロンドンのイベントに参加しようと話しているのだけれど、もしよければ一緒に行きません?」と誘われました。初めて耳にするイベントでしたので、「それは一体どのような催し物なんですの?」と尋ねますと、ロンドン内のさまざまな建物の内部を無料で見学できるイベントとのこと。通常は一般に公開されていない場所も訪れることができるため、人気のある物件は事前予約や抽選が行われたり、朝から行列ができたりするそうです。外務省や王立裁判所、各国大使館といった、一生足を踏み入れることがないと思われる建物を心置きなく見学できる貴重な機会だと知り、わたくしも喜んで参加させていただくことにいたしました。

それにしましても、大都市の中枢にある重要な各施設を一斉に公開するというユニークなイベントは、日本ではあまり聞いたことがございません。どういった経緯で、このような企画が誕生したのでしょう? せっかくですので、調べてみることにいたしました。

「オープンハウス・ロンドン」の事務局に電話をかけてみましたところ、広報担当の女性が丁寧に対応してくださいました。その女性のお話によりますと、起源は1983年にフランスで始まった「European Heritage Days」とのこと。これは自国の歴史・文化遺産を国民に広く知ってもらうことを目的としたイベントで、その一環として「Doors Open Days」という日を設けており、普段非公開となっている歴史的建造物などを一般公開しているのだとか。9月第2週の週末に行われることが多く、フランスだけでなくヨーロッパ約50ヵ国で同様のイベントが開催されるのだそうです。

これに倣って、1992年にロンドンでスタートしたのが「オープンハウス・ロンドン」です。ヨーロッパの「Doors Open Days」が終了した翌週末に開かれています。建築に対する関心や理解を深め、自分たちが暮らす環境への意識や知識を向上させることを目指して企画されたもので、非営利団体や多くのボランティアによって運営されているとおっしゃっていました。

開催当初に公開された建築物はわずか20ほどだったそうですが、英政府が2000年に向けて実施した大規模な「ミレニアム・プロジェクト」により、英国に建築ブームが到来。ロンドンの各地域で再開発事業が進められた結果、現在では毎年約800ヵ所が一般に公開されているとのことでした。ちなみに、英国も1994年から「European Heritage Days」(英国では「Heritage Open Days」と呼ばれています)にも参加しているそうです。

今年の「Heritage Open Days」は9月10日(土)・11日(日)、「オープンハウス・ロンドン」は17日(土)・18日(日)。友人たちと、あちこち巡ってみようと思っております。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年9月5日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年11ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。
 

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