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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年10月20日

何ゆえ、ハロウィーンにはカボチャのお化けを飾りますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

暮らし慣れた日本を離れ、英国にまいりましてから2年と1ヵ月。お父様へのお手紙も、100通目となりました。先方のことを思いながら季節に合わせた便箋を選び、自筆で近況をしたためる時間を、わたくしはとても気に入っております。紛失せずにお手元に届いているか、毎回心配しなければならないのが「玉に瑕」ですけれど、これからも頑張って書き続けようと思っております。

さて、本日も新たに学びました英国の文化について、ご報告いたしますね。

10月も終わりに差しかかり、まもなくハロウィーンがやってまいります。スーパーマーケットでも、大きなカボチャがたくさん積まれていたり、お化けやクモなどが描かれたお菓子や仮装グッズが並んだ特設コーナーが登場したりと、ハロウィーンが近づいていることを感じます。ハロウィーンの発祥地は英国北部ですが、本来は伝統的な宗教行事のひとつであるため、米国ほど盛り上がりを見せるわけではございません(これにつきましては、以前ご報告したことと存じます)。とはいえ、小さなお子さまがいらっしゃるご家庭では、目・鼻・口を切り抜いたカボチャのお化けなどを窓辺や軒先に飾ることが多く、エドワーズご夫妻宅のご近所でも、昨年カボチャのお化けを何体か見かけました。それにしましても、なぜハロウィーンにカボチャのお化けを飾るのでしょう? 調べてみることにいたしました。

資料をあたりましたところ、カボチャの置物は「ジャック・オ・ランタン(Jack-o'-Lantern)」と呼ばれているようです。「ランタン(手提げランプ)を持ったジャック」という意味で、その名の由来として様々な逸話が残されていました。もっともよく知られているのが「悪魔をだました悪賢い放蕩男」の話です。彼(ジャック)は悪魔をだまして、「死んでも地獄に落ちない」という契約を結びました。しかし死後、生前の行いの悪さから天国へ行くことができず、かといって地獄に行くこともできない彼は、仕方なく萎びて転がっていたカブに憑依。安住の地を求めて彷徨い続けている…というもの。ジャック・オ・ランタンとは、彼が憑依したカブのことで、人に目撃される際には火の玉であったり、カブ頭の男性の姿であったりするそうです。

アイルランドや英国北部に住んでいた古代ケルト人の暦は、11月1日~10月31日で1年とされていました。大晦日の10月31日には死者の魂(悪霊)が家族の元へ戻ると信じられており、身を隠すために悪霊に扮したことがハロウィーンの仮装の起源とされています。ジャック・オ・ランタンもこれと同様に、悪霊を遠ざける役割として飾るようになったとのことでした。

18~19世紀に、多くのアイルランド人が新天地を求めて米国に移住。米国にハロウィーンが伝わったものの、米国ではカブよりカボチャのほうが手に入りやすかったことから、カボチャを使うことが一般的になったとか。ただ、アイルランドや英国北部では今でもカブ(turnip)を使う地域もあるようでした。

今年はエドワーズ夫人に手伝っていただきながら、わたくしもジャック・オ・ランタン作りに挑戦したみたいと思っております。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年10月16日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年1ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。
 

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