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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年10月27日

何ゆえ、英国の天気は変わりやすいんですの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりございませんでしょうか? 今週末には冬時間に切り替わり、いよいよ英国の長くて暗い冬が始まります。今朝も起きてカーテンを開けましたら、まだ外は街灯がともっていて薄暗く、冬がもうすぐそこまで近づきつつあることを実感いたしました。

さて、本日も英国について新たに知り得ましたことをご報告したく、筆をとりました。

英国といえば、「1日の中に四季がある」と表現されるほど、天気が変わりやすいことで有名です。曇天から快晴に変わったかと思えば、急に雨が降り出して気温が下がったり…。英国にまいりましてから、折りたたみ傘や薄手のショールが手放せなくなりました。

とくに最近は、日々冷え込みが厳しくなっておりますので、毎日必ず天気予報を確認するようにしているのですが、この天気予報が「くせ者」なのです。雲と太陽のマークが並んだ「曇りのち晴れ」や、太陽と雨のマークがくっついた「晴れときどき雨」なら、誰でも理解できると思います。ところが、先日見たロンドンの翌日の空模様はというと、厚い雲のマークとともに太陽の日差し、そして雨マークもついていたのです! ほぼ曇り空、でもときどき晴れたり雨も降ったり…ということでしょうか? エドワーズ夫人に尋ねましたところ、冬にはさらに雪マークが加わることもあるとのこと! 天気が変わりやすいとはいえ、これでは果たして予測する意味はあるのでしょうか。どうしても我慢できず、問い合わせてみることにいたしました。

英国は北大西洋の東側、ヨーロッパ大陸の西側にあります。赤道近くのアフリカ沖で暖められた南大西洋の暖流が北上し、ヨーロッパ大陸の西岸に流れこんでくるそうなのですが、英国付近でその暖流はちょうどユーターンするのだとか。さらに、偏西風が常に海流上の暖気を運んでくることから、ロンドンのように西岸に近い地域はヨーロッパのなかでも比較的暖冬となる傾向があるとおっしゃっていました。確かに、フランスやドイツの内陸部はロンドンよりも寒い印象がございます。

このように、英国の気候は海流や海水温の影響を多大に受けているため、ほかの国とは空模様が大いに異なってしまうとのこと。また偏西風の強弱などによって雲が流れる速度も変わるため、天気や気温が変化しやすく、正確な天候の予測が難しいようです。

札幌の緯度は北緯43度ですが、ロンドンは北緯51度。北海道からさらに北上して、樺太あたりにロンドンは位置しております。ですが、冬でも北海道や樺太のように氷点下に達するほど寒くならないのは、こうした理由があったのですね。大変勉強になりました。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年10月24日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年1ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。
 

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