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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年12月1日

何ゆえ、英国の「プディング」は日本のプリンと異なりますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、いかがお過ごしでしょうか? 早速ですが、本日も日本と英国の違いをまたひとつ発見いたしましたので、ご報告いたしますね。

昨日、友人のソフィア嬢と一緒に、ハムステッドのパブでサンデーローストをいただきました。甘党のわたくしとしましては、やはり「デザートは別腹」。もちろん、食後の甘味も注文することにいたしました。

どれにしようか散々迷ったものの、「Pudding with custard」を注文。久々に「プリン」を口にすることができると楽しみにしておりましたが、テーブルに運ばれてきたのは…熱々のカスタードがたっぷりとかけられたスポンジ・ケーキ! とても美味しそうではありますけれど、わたくしが注文したプリンではございません。慌てて店員の男性に「お皿をお間違えですよ」と伝えましたところ、彼は不思議そうな表情。そして、このスポンジ・ケーキが「Pudding with custard」だとおっしゃるのです! 一体どういうことなのでしょう? 日本のプリンと英国の「プディング」は別の食べ物なのでしょうか。気にかかりましたので、調べてみることにいたしました。

さまざまな資料に目を通しました結果、どうやら英国のプディングには2つ意味があることがわかりました。

英国でのプディングの発祥は、古代までさかのぼります。当時は牛や豚の腸に肉などを詰めて茹でた、ソーセージのような料理だったとのこと。しかし17世紀になると、「肉を使って茹でた料理」と「小麦粉・ナッツ類・砂糖を使って茹でた料理」に2分化されたようです。18世紀後半には、肉を材料とする前者のプディングが少しずつ姿を消しはじめ、さらに19世紀には、後者のプディングにナッツ類のほかドライフルーツなどが加えられ、デザートとしてのプディングが主流となったとのことでした。ですので、英国において単に「プディング」と言った場合、スポンジ・ケーキのような焼き菓子や、時にはデザート全般を表現する言葉にあたるのだとか。

サンデーローストやイングリッシュ・ブレックファーストといった伝統的な英国料理には、ヨークシャー・プディング、ブラック・プディング(血肉ソーセージ)などの「プディング」が添えられていますが、これらは『元祖のプディング』の名残りのようです。

わたくしが注文した「Pudding with custard」は「プディングのカスタード添え」ですので、店員の方は間違えていなかったことがわかりました(疑っていたわけではございませんが…)。

ちなみに米国では、英国と同様にスポンジ・ケーキのようなプディングなどもありますが、そのほかに卵をベースにしたカスタードやゼラチンを含んだムースのようなデザートも「プディング」と呼ぶそうです。どうやら日本の「プリン」は、米国から伝わったようですね。ただお父様、英国にもプリンはあるのですよ! スーパーマーケットで発見したその商品名は「クリーム・キャラメル」。プリン=クリーム・キャラメルと覚えておかなくては、と学んだ次第です。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年11月28日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年2ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。
 

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