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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2017年3月9日

何ゆえ、英国の歩行者は
信号無視をいたしますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、いかがお過ごしでしょうか? 「春の訪れを告げる花」であるスイセンが咲きはじめる時期がやってまいりました。少しずつ日も長くなってきておりますが、日本の気候はいかがでしょうか。

さて、早速ではございますが、本日もまた英国と日本における習慣の違いにつきましてご報告したいことがあり、筆をとりました。

わたくしが英国にまいりまして、戸惑った出来事のひとつが「歩行者の信号無視」です。ロンドンの人々は、自動車やバスが走っていなければ、赤信号でも横断歩道を渡ってしまうのです! また、横断歩道以外の場所で道路を横切る人も、数え切れないほど見かけます。青信号に変わるのを待ち続けております自分が、少々愚鈍な人間のように感じられてしまうことも、しばしば…。先日も、信号を無視して横断歩道を渡る人につられ、うっかりと確認せずに前へ踏み出しましたところ、自転車と衝突しそうになってヒヤリとした「事件」がございました。一体なぜ、英国人は交通ルールを守らないのでしょう? 好奇心が抑えられず、調べてみることにいたしました。

調べを進めましたところ、英国における交通ルールの「寛容さ」が原因であることがわかりました。

たとえば、米国や欧州諸国の一部では、歩行者の信号無視を厳しく取り締まっており、警察官に現場を見咎められますと罰金が科されるのだとか。とくに米国では、信号を無視して道路を横断する行為を「ジェイウォーキング(jaywalking)」と呼ぶそうで、道路を渡ろうとする違反者と警察官が揉めるケースが多々あるようです。

日本でも、罰金制度こそ設けられていないものの、赤信号で横断歩道を渡る行為は道路交通法で規制されております。小さな頃から「赤信号では渡らない」という教育を受けておりますので、信号待ちをしている中で、1人でもそれを無視して渡ろうものなら、冷ややかな視線を注がれることでしょう。

一方、驚きましたことに英国では、歩行者の信号無視等は法律で規制されていないのだそうです! もちろん、横断歩道を使って道路を安全に渡ることが推奨されておりますが、その「安全性」の判断は個人に委ねられているとのこと。赤信号で渡って交通事故に遭ってしまっても、それは自己責任とされるだけなのだそうです。以前、警察官の方が車道を悠々と横切っていらっしゃるのを見て、大変驚愕したのですけれど、規制されていなかったからなのですね。

どうやら英国人は、信号が何色かという点よりも車が来ているのかどうか、つまり自分の身の安全を確保できるのか否かを、横断歩道を渡る際の第一の判断基準にしているようです。合理的ではありますが、英国で車を運転するのは大変なことだと、あらためて実感いたしました次第です。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成29年3月5日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年5ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

 

 

 

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