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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2017年5月4日

何ゆえ、英国と米国には「ソーホー」と

呼ばれるエリアがありますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

最近、ロンドンは気温が急激に下がり、肌寒い日が続いております。英国人は晴れた日には春の初めでも半袖、寒い日には初夏でも冬用ダウンコートを着るなど、季節を気にせず「着たい服」で過ごすのが一般的ですが、日本人としましては、藤の花が美しく咲いている今の季節に真冬の服装で歩くのは違和感がございます。ですので、少々やせ我慢をして、春物のコートで過ごしております。「女性は身体を冷やしていけません!」とお叱りになるおばあさまの声が、聞こえてきそうですけれど…。

さて本日も、英国について新たに知り得ましたことをご報告したく、筆をとりました。

先日、ソーホーにあるカフェへ行ってまいりました。そのカフェは「知る人ぞ知る」シークレット・カフェで、パブの2階にひっそりとオープンしているのですが、インテリアや食器が可愛らしく、素敵な時間が過ごせました。ソーホーに出かけたと聞き、おそらくお父様は目を剥いていらっしゃるかもしれません。ですが、ご安心くださいませ。「ソーホーは危険なエリアだから、夜はもちろん、昼間でも1人で行ってはいけない」とのお父様の言いつけを守り、友人を誘って3人でまいりましたので、何も危険な事件には巻き込まれませんでした。

それにしましても実際に訪れてみて、なぜソーホーが「危険」なエリアなのか、よく理解できませんでした。確かに、あまり綺麗とは言い難い場所でしたが…。気になりましたので、ロンドン博物館(Museum of London)に問い合わせてみることにいたしました。

同館の主任学芸員、ヘーゼル・フォーサイスさんのお話によりますと、「ソーホー(Soho)」という名前が最初に歴史上に登場するのは17世紀。なぜそう呼ばれるようになったのか詳しいことはわからないようですが、当時、同地一帯は自然豊かな草地で、狩場として有名だったとか。狩りで獲物を見つけると、動物の種類によって「○○○を見つけたぞ!」と周囲に知らせる「決まった掛け声」がそれぞれあり、この地域では「So-ho !」「So-hoe !」といった掛け声がもっとも多く叫ばれていたことから、通称「ソーホー」と呼ばれるようになったというのが、一般的に知られている説とおっしゃっていました。ちなみに、ソーホーはウサギを追うときの声、「Tally-ho !(タリーホー)」はキツネです。猟犬たちは、主人が発するこの掛け声を聴き分けて、獲物を追い込むのだそうです。

19世紀半ば頃には、劇場や「春をひさぐ女性たち」が立つ歓楽街へと変身。現在はレストランなどの飲食店が並び、そういった「怪しいお店」はほとんど姿を消しましたが、お父様が懸念されていた理由がやっと理解できました次第です。

米国にも「ソーホー(SoHo)」と呼ばれるエリアがございますが(Hが大文字になります)、同所の歴史は浅く、1970年代に名付けられたのだとか。「South of Houston Street」の略で、どうやらロンドンのソーホーを意識した地名のようです。久々に「大英帝国」の底力を実感いたしました。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成29年5月1日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年7ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

 

 

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