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2013年1月17日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物①ブルゴーニュ その1

1億8千年前の土壌から生み出されるワイン

年も改まり、新しいことにチャレンジしようと計画されている人も多いことだろう。この『ミニミニ講座』でも、今月から少し趣向を変え、世界各地の代表的ワインを、おさらいも兼ねて取り上げるとともに、その地元の郷土料理や名産物を併せてご紹介していきたいと思う。
ワインといえば、まずはフランス。その中でも、ブルゴーニュから始めてみることにしたい。ブルゴーニュ産で、世界的に知られるワインとして間違いなく名前が挙がるのがシャブリChablis。これはシャルドネChardonnay種から造られる白ワインだが、ほかにもソーヴィニョン・ブランSauvignon Blanc種、ガメイGamay種、ピノ・ノワールPinot Noir種なども栽培され、それぞれから白ワイン、ロゼや赤ワインが造られている。しかし、シャブリと名乗れるのはシャルドネ種から造った辛口白ワインのみ。シャブリ村周辺地区の土壌は、古いもので1億8千年以上も昔の後期ジュラ紀のもので、キンメリッジ階粘土と呼ばれている。シャブリ・ワインの中でも最も格付けの高いグラン・クリュとプルミエ・クリュのワインは、この土壌のブドウ畑で育つブドウから造られている。ちなみにこの土壌は、英国のドーセットのキンメリッジ村の土壌と同じで、カキの貝殻の化石、粘土、石灰岩から構成されている。ここから、火打石を打ったような味わいをもち、酸味が高く、引き締まった、切れ味のよいすがすがしいワインが造られる。ベーシックなシャブリには青いプラムのような果実香味、グラン・クリュやプルミエ・クリュのワインには熟れたレモン、タルト、カスタードのような香味がある。グラン・クリュ(時にはプルミエ・クリュも)は醸造工程でオークの新樽が使われることが多く、コクのある凝縮された複雑な香味のワインとなる。
昔からシャブリは生ガキに合うと言われてきているが、その場合には、ベーシックなシャブリやオークを使ってないプルミエ・クリュのシャブリを選ぶとよい。貝や甲殻類、アンコウやヒラメのような白身の魚とも好相性。さらに、グラン・クリュのシャブリは、濃厚なソースを使った魚料理、スモークサーモン、揚げ物、またはヴィール(子牛)のヒレ・ステーキ、そしてチーズとの相性も良い。また、特に合わせたいチーズは、2匹の猫と1匹の狼がマークになっているシャウルスChaource。秋に造られたシャウルスはキノコの風味を呈する。

エリートたちに愛されたカタツムリ

さて、読者の中にはエスカルゴ(フランス語でカタツムリのこと)を試された方も多いと思うが、このエスカルゴはブルゴーニュ名物のひとつ。調理法には、ワインやトマトのソースを使ったもの、パイ包み、フリカセ(煮込み料理)などがあるが、中でも有名なのはガーリック・バターとパセリを混ぜたエスカルゴ・バターを使ってオーブンでローストする「ブルゴーニュ風エスカルゴ」だ。ブルゴーニュ産エスカルゴはサイズも大きく味わいが豊かとして人気が高かった。しかし、1970年に生産量が急減し、今では東欧からの輸入に頼っている。その他、フランスではプティ・グリ、グロ・グリ、トルコ・エスカルゴの3種も食用として出回っている。プティ・グリとグロ・グリはフランス産で、生後、成熟するまで6ヵ月かかるのに対し、エスカルゴ・ドゥ・ブルゴーニュは生まれてから成熟するまで2年かかるというシロモノ。一方、トルコ・エスカルゴはトルコやギリシャ、そしてバルカン諸国からの輸入品だ。絶食している冬眠中のエスカルゴが最も美味とされ、休眠中でないエスカルゴの場合には、調理する前に1週間絶食させる。養殖中に与えたエサによって、その風味がエスカルゴ自体につくともいわれている。 食用としてのエスカルゴの歴史は有史以前にまでさかのぼることができ、古代ローマ時代には『エリートのご馳走』として楽しまれ、エスカルゴの養殖もこの頃からスタート。中世にはキリスト教徒にとって「肉食絶ちの金曜日」のご馳走として親しまれた。17世紀に消費が減少するが、19世紀初頭に政治家であり司教、そして大変な美食家だったタレーランがロシア皇帝にエスカルゴ料理を献上したことから再び広まったという。

「シャブリ」という名のソーセージ

ところで、この地のほかの名物といえば、オンデュイエット・オ・シャブリAndouillette au Chablis。オンデュイエット(後述)はフランスの他の地域でも造られているが、ブルゴーニュでは、グリルしたオンデュイエットを、エシャロット、ディジョン・マスタード(これもブルゴーニュの名産品)、そしてクリームと和えてオーブンで焼いて供する。オンデュイエットは、ポークまたは子牛の肉に、牛の胃や豚や牛の腸を粗くきったもの、塩、コショウ、ワイン、オニオンを混ぜて腸詰めにしたソーセージで、直径3センチほどのものもあれば、太いものでは10センチもある楕円形のソーセージ。味わいは普通のソーセージよりもスパイシーで匂いが強く、スモーキーかつ濃厚、土っぽささえ感じさせて多少甘みもある。是非試してほしい珍味といえる。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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