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2013年2月14日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物①ブルゴーニュ その2

黄金色のブドウの葉に覆われる斜面

今回は、シャブリ以外のブルゴーニュ・ワイン産地についてお送りしたい。シャブリから100キロほど東南に下るとディジョンDijonがある。ここをスタートに、南のシャニーChagnyの町までの約55キロに渡る地域で、ブルゴーニュ最高のワインが造られている。同地域は、中央山地支脈の東南向き斜面にあり、最高の畑はその斜面の標高250~350メートルの範囲に細長く帯状に横たわる。仏語で「斜面」は「コートcote」というが、この地域の斜面(コート)は秋になると、色づいたブドウの葉で黄金色になることから、「コート・ドールCote d'Or」(「or」とは仏語で「黄金」という意味)と呼ばれるようになった。 
このコート・ドールは、さらにほぼ同じ長さの2地区に分けられている。北はニュイ・サン・ジョルジュ村を中心にしているのでコート・ドゥ・ニュイと呼ばれ、主に赤ワインの生産で有名だ。南はボーヌ村を中心にしたコート・ドゥ・ボーヌで、赤ワインときわめて偉大な白ワインの生産地として名高い。南の赤ワインは、ポマールPommardを除いて口当たりが柔らかく、北のワインより早目に飲むことができる。なお、コート・ドールにはグラン・クリュ(特級格付け)畑が33あるが、1つの例外(コルトンCorton)を除いたすべてのグラン・クリュ・赤ワインは北のコート・ドゥ・ニュイ地区から、そして、やはり1つの例外(ミュジニーMusigny)を除いたすべてのグラン・クリュ・白ワインは南のコート・ドゥ・ボーヌ地区から生み出されている。

対照的なふたつの偉大なワイン産地

ブルゴーニュはボルドーとならび、世界で最も偉大なワイン産地と称されているが、気候、土壌、ブドウ品種などにおいて全く異なる。ボルドー地方は湿度が高く、夏と冬の温度差の少ない、温暖な海洋性気候で、「超」がつくほど有名なワインを多く生み出すジロンド川左岸地区の土壌は小石混じりの砂質土壌となっている。これに対してブルゴーニュ地方は雨が少なく、夏と冬の温度差の大きい北部大陸性気候で、土壌も石灰を含む泥灰土(ピノ・ノワール用)やチョーク質粘土(シャルドネ用)が多い。ボルドーでは特に春の気候が不順なために、萌芽や開花時期の異なる数種のブドウ品種を栽培し、異なった品種をブレンドしてワインを造るが、ブルゴーニュでは局所的に降る夏の雹(ひょう)による被害に備え、幾つかの異なった村やブドウ畑に同じブドウ品種を栽培することでリスクを回避している。 

クローンの違いによる個性豊かなワインたち

赤ワイン用のピノ・ノワールは、突然変異しやすいためにクローンが多く、コート・ドール各地において何世紀にも渡って独自に異なるクローンが発達してきた。これが、テロワール(地勢/土壌/気候/品種による個性)を明確に表現しているといわれるコート・ドールのピノ・ノワールが、場所により異なるワインを造りだす理由の1つとなっている。例えば、コート・ドール北部に位置するシャンボール=ミュジニー村には、北にボン・マール畑、そして南にミュジニー畑という2つのグラン・クリュ(特級)格付けの畑が存在する。ボン・マールのピノ・ノワールは、色が濃いうえにタンニンも強く、ピノ・ノワール特有の赤いベリー香味のみならず、カシスのような黒いベリーの風味を呈す長期熟成型のワインだが、ミュジニーというとそれとは対照的に、それほど色も濃くなく、タンニンもソフトで、エレガントなワインを産出する(あるワイン評論家によると、片やエリザベス・テーラー、片やカトリーヌ・ドヌーヴだそう)。

ディジョン・マスタードが美味しくなった理由

さて、コート・ドールの北端の町、ディジョンに話を戻そう。このディジョンは、ご存知のとおりマスタードでも有名な町。ホットドッグやソーセージ、ロースト・ビーフ、ビーフ・ステーキ、チキンといった肉料理に加え、サーモンにも合うほか、サラダのドレッシングにも大活躍するディジョン・マスタードだが、マスタードの栽培をこの地に紹介したのは、ブドウと同様、古代ローマ人だったようだ。中世期までにはブルゴーニュの広域に渡って栽培されるようになり、1336年のブルゴーニュ公フィリップ主催の晩餐会では大いに使われたとの記録が残っている。しかし、ディジョン・マスタードが人気を博するようになったのは、ジャン・ネジョンJean Naigeonが新しいレシピを考案してから。それまでのマスタードは、マスタードの種をすり潰して粉にし、未熟のブドウを絞ってとった果汁を混ぜて作っていたのだが、ネジョンはその果汁の代わりに、ブルゴーニュ産のワイン・ヴィネガーを混ぜた。これにより、マスタード自体の酸味が柔らかくなり、色につやが出、芳醇な風味を呈するようになったのだった。フランス料理にはソースを使うものが多いが、「○△□ア・ラ・ディジョネーズa la Dijonnaise」と書かれていたら、そのソースにはディジョン・マスタードが含まれていると思ってよい。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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