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2014年8月14日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物④フランス南部 その5

「質より量」の生産方式との決別 

南仏のワイン生産史を改めて振り返ってみたい。穏やかな気候と肥沃な土壌に恵まれていたため、古代ローマ人によってブドウ栽培が紹介されて以来、盛んにワイン造りが行われてきた。19世紀後半にアルジェリアが独立し、フランスにワイン法ができるまで、南仏はフランスにおけるブドウ栽培の中心地だった。ただ、当時は『質より量』が尊ばれ、薄めのワインを大量に生産し、アルジェリアや他の北アフリカで造られた色の濃い、アルコール度も高いワインをブレンドして商品を造って出荷。国民1人当たりのワイン消費量が80リットルにものぼっていた時代の話だ。ところが、フランスがEUに加盟し、ヨーロッパ・ワイン法が確立され、ニューワールドから良質で新しいスタイルのワインが紹介されるに至り、ベーシックなテーブル・ワイン市場が崩壊。それ以降、南仏でも2つの動きが並行して見られるようになった。1つは原産地統制名称ワインの増加。もう1つは国際的ブドウ品種名を掲げたヴァン・ドゥ・ペイ(地酒)の急速な発展だ。

困難に挑む若き栽培者たち

ルシヨン地方に関して見てみると、ペルピニャンPerpignanの町を中心にしたカタラン地区から、芳醇で果実味にあふれ、しかも個性を備えたコート・デュ・ルシヨン・ヴィラージュCôtes du Roussillon Villagesという、原産地統制名称の近代的かつ良質の赤、白、ロゼの辛口ワインが続々と造られている。特に、カルセCaolceという小さな村(土地がcalcaire〈石灰〉質であることから名づけられた)から造られているワインは注目に値する。ここはペルピニャンからA3そしてD117を北に30分ほど車で走った山中にあり、土壌には石灰だけでなく片岩も多く含まれ、非常に痩せているだけでなく、風が強くて乾燥しており、ブドウ栽培は困難だが、ブドウの樹の病気は少ない。そのおかげで、ビオディナミ栽培(超有機栽培)で高品質のワイン造りを目指す若者が集まるようになった。この村の知名度を一気に上げる発端となったのはガウビーGauby(www.domainegauby.fr)で、樹齢が50年以上というブドウから、赤ワインのムンタダMuntadaやレ・カルシネールLes Calcinaires、白ワインのレ・ロカイユLes Rocailles、クーム・ジネストルCoume Ginestreといった偉大なワインが生み出されている。いずれも入手が非常に困難ながら、ロンドンでは「Roberson Wine」(www.robersonwine.com)と「Berry Bros. & Rudd」(www.bbr.com)で買うことができる。

チョコにもチーズにも合う稀有なワイン


© Dominik Hundhammer
また、カタラン地区では辛口ワインの他に酒精強化ワインも多く造られており、特にヴァン・ドゥー・ナテュレルVins Doux Naturelsと呼ばれる極甘口ワインの生産で有名だ。極甘口ワインといえば、貴腐ブドウから造られるボルドー産のソーテルヌSauternesやハンガリーのトカイ・アスーTokaji Aszúをはじめ、ドイツやイタリアで造られるワインがよく知られるが、いずれも白。それに対し、ここでは赤の極甘口も造られている。白はミュスカMuscat種から、赤はグルナッシュGrenache種から造られている。ミュスカ種から造られるものとしては、ミュスカ・ドゥ・リヴザルトMuscat de Rivesaltesとミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワMuscat de Saint Jean de Minervois、グルナッシュ種から造られるものとしてはバニュルスBanyulsとモーリMaury、そしてブドウ品種をブレンドして造るリヴザルトRivesaltesなどが代表的なワインといえる。アルコール発酵とは液体中の糖分が酵母によってアルコールに変わることを示すが、これらの極甘口ワインは、発酵中に強いスピリッツを加えて酵母の働きを止め、液体中に糖分が残るようにしたもの。
黒ブドウ品種のグルナッシュ種から造られるバニュルスとモーリは、屋内そして屋外で長期熟成される。屋外ではガラス製のボンボン型の壺に入れられて高温下にて熟成される=写真上。こうしてできたバニュルスやモーリはガーネット色。酸化風味を伴うブラック・チェリーやレーズン、そしてココアの香味のワインで、ワインとしてはめずらしくチョコレートのデザートにも合う。しかし、何と言っても地元の青かびチーズ、ロックフォール=同左=との相性は最高。食事の最後にこのマリアージュ(組み合わせ)で締めくくりたい。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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