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2015年3月12日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑨ロワール川流域 その1

運命を変えた害虫被害

© Taxiarchos228
© Taxiarchos228

今回も引き続き、ロワール川流域のワインについて説明しよう。ロワール川は中央山地に源を発し、約400キロ北流してから西に折れ大西洋に流れ出る、長さ1,012キロのフランス最長の川だ。北上した川が西に折れるあたりに、ロワール川流域で最も有名な白ワインの産地がある。 国の中央に位置するために、「中央ブドウ栽培地」または「サントル」(仏語で「中央」という意味) と呼ばれている。古くはブルゴーニュ公国の一部だったために、ブルゴーニュ地方のブドウ品種、ピノ・ノワールを使った赤ワインの産地だったのだが、19世紀後半に国内ブドウ畑の約80%を荒廃させたというフィロキセラ(ブドウの根につく害虫)の被害を受けた際、隣県から害虫に比較的強いソーヴィニョン・ブラン種を導入し、以後辛口白ワインを主流とする産地となった。 ソーヴィニョン・ブラン種の主な産地にサンセールSancerre、プイイ・フュメPouilly Fumé、ムヌトー・サロンMenetou-Salonがあり、西洋スグリやレモン、ライム、ハーブ、ミネラルといった風味を持つ、世界でも最も上質な辛口白ワインを生み出している。 サンセールはロワール川左岸に位置し、「丘の上の町」=写真=として知られている。石灰岩の露出した丘の上に形成された小さな市街地で、中世の歴史的建造物が散在する市街は非常に美しく、多くの人が訪れる。

 

世界に誇る上質の辛口白ワインの故郷

サンセール村を中心とする周辺15村で、サンセールAOCを名乗ることが許されている。全体的に白亜質で水捌けのよい、小石や海洋生物の化石が混ざった土壌であり、造られるワインのほとんどは、収穫から3年以内の早期消費用ワインで、新鮮な香りが特長。しかし、シャヴィニョルChavignol村やレ・モン・ダネLes Monts Damnés村がある丘の北西部の栽培地には火打石が多く含まれることから、ミネラルや火薬のようなスモーキーな風味を呈し、瓶内熟成させることでさらに質が高まるスタイルのしっかりしたワインも生み出されている。
一方、サンセールの南方、ロワール川から遠ざかる地区の栽培地では、石灰質の固い土壌からムヌトー・サロンAOCと呼ばれる、サンセールよりも重めのワインが造られている。さらに、川を挟んでサンセールの対面、ロワール川右岸にはプイイ・フュメPouilly Fumé AOCがある。土壌はサンセールに似ているが火打石がいっそう多く、より煙や土を強く感じさせる風味が伴う。
なお、サンセールとムヌトー・サロンでは、少量ながらピノ・ノワールからロゼや赤ワインも造っているが、ここでは赤ワインにはふれず、またの機会に譲ることにしたい。

ミネラルの特質と酸味で「ワインの敵」とすら好相性に

ヤギ乳のチーズ、サント=モール・ドゥ・トーレーヌ。ライ麦藁を真ん中に通して作る(中央に穴があいているのが分かる)。 © Coyau
ヤギ乳のチーズ、サント=モール・ドゥ・トーレーヌ。ライ麦藁を真ん中に通して作る(中央に穴があいているのが分かる)。 © Coyau

これらのワインは貝、甲殻類、淡水魚、家禽類、サラダ、柑橘類を使った軽い料理とよく合う。ワインの敵とさえ言われている、レモンをしぼったアスパラガスにさえも合う。ところで、この地域を訪ねると、山羊の放牧が多いことに気付く。それもそのはず、このあたりはシェーブル、つまりヤギ乳のチーズの産地なのだ。ワインにもシェーブルにも、ぴりっとするようなミネラルの特質や酸味があるので、この地方では古くから両者を組み合わせて楽しんできた。例えば、ライ麦藁が真ん中に通ったユニークな形のサント=モール・ドゥ・トーレーヌSainte-Maure de Touraineは、クリーミーでフレッシュ、まろやかなコクのあるチーズだが、古いシャヴィニョルやレ・モン・ダネとは最高の相性だ。ぜひ試していただきたい。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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