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2015年6月11日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑩シャンパーニュ地方 その3

医者がルイ14世に勧めたワイン

 

今号でも引き続きシャンパーニュにまつわる話をお届けしたい。ワインに含まれるポリフェノールには抗酸化作用や抗ガン作用があるとの情報が世界に広まったのは1980年代初めのことだが、実は、ワインは古代ギリシャ時代から薬として用いられていた。シャンパーニュに関していうならば、シャンパーニュ地方のワインが特に健康によいと指摘したのは、ルイ14世の侍医。ただ、当時のシャンパーニュはピノ・ノワール種から造られた淡い色調の非発泡性赤ワインだった。
実は、その頃シャンパーニュ地方で造られるワインには多少ながら発泡性があり、その泡を除く努力がなされていた。アルコール発酵とは、酵母が糖分を消費して、二酸化炭素を発生させながらアルコールを生み出すことだが、シャンパーニュ地方のように仕込み時期の気温が低いと、酵母が一旦、発酵作業を停止してしまう。ここで発酵完了として瓶詰めされると、後で気温が上がった際に酵母が瓶内で発酵を再開し、そのためにワインが発泡性となることが多かったからだ。
また、シャンパーニュ地方のピノ・ノワールは、その冷涼な気候により完熟することが滅多になく、淡い色調の赤ワインしかできなかったために、黒紫色であるニワトコの実elderberryを使って、濃い色に仕上げていたようだ。

ベルサイユ宮殿での競合

シャンパーニュとブルゴーニュのワインは、ベルサイユ宮殿で競合するようになり、結局はブルゴーニュのワインがその争いに勝利する。シャンパーニュが次第に非発泡性白ワインを造るようになっていくのは、これが理由だった。先月号で紹介したグラン・マルクの1つ、ゴセGossetは非発泡性ワイン最古の生産者だ(1584年創業)。
フランスでは1531年に、フランス南部、ラングドック=ルシヨン地方オード県にあるリムーLimouxでベネディクト会の修道士によって初めて意図的に発泡性ワインが造られ、発泡性ワインとして飲まれた。その後、1680 年にベネディクト会オーヴィールHautville寺院の酒庫係を務めるドン・ペリニョンによって、異なったブドウ品種をブレンドすることで優れた白ワインが造られるようになってから、シャンパーニュは発泡性白ワインとしてその人気を高めるに至る。最も古いシャンパーニュ・ハウスは、やはりグラン・マルクの1つ、ルイナールRuinartで、創業は1729年。
しかしながら、その頃のシャンパーニュは、発酵作業終了後に死んだ酵母が瓶内に残ったままで澄んでいなかった。澄んだシャンパーニュになるのは、ヴーヴ・クリコVeuve Clicquot(グラン・マルク)とそのセラー・マスターが澱抜き作業を発明する1811年まで待たなければならなかった。

辛口シャンパーニュの登場


© Cherry
19世紀を通して、シャンパーニュは甘かった。特に大得意先のロシア皇室用には1リットル中250~330グラムの砂糖を混ぜたというから非常に甘かったことになる。英王室は、顧客の中でも最も辛口好みだったが、それでも22~66グラムの砂糖を加えていたと記録にある。その後、次第に甘さが抑えられ、ワイン自体の品質も向上。1846年、グラン・マルクの1つ、ペリエ・ジュエPerrier-Jouëtが、英市場に向けて初めて辛口のシャンパーニュを販売。ところが、市場では受け入れられず、評価も最悪だったようだ。現在の「Brut」、つまり辛口シャンパーニュ(砂糖の量:0~12グラム/リットル)が市場に受け入れられるようになるのは何世代もあとのことだった。
さて、今回、シャンパーニュとともに味わいたいものとしてご紹介するのは、郷土料理というより名産物。ビスキュイ・ローズ・ドゥ・ランスbiscuits roses de Reimstで、ピンク色のかわいい焼き菓子だ=写真=。シャンパーニュに浸しながら頂くのが通とか(もちろん、シャンパーニュに浸さず、そのまま食べても美味)。シャンパーニュに浸すと、中はシャンパーニュをたっぷり吸ってホワホワになるのに対して、外側は浸した後でもカリカリで、その対照的な食感が楽しい。フランスでは菓子を何かに浸して食べる習慣があり、シャンパーニュを飲むのが許されていない子供たちでも、このお菓子を浸す形でなら、シャンパーニュを口にすることはOKなのだそうだ。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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