logo
 
2015年8月13日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑩シャンパーニュ地方 その5

ワインの特徴を決定付けるテロワール

「テロワールterroir」―この言葉は、「そのワインはテロワールを見事に表現している」などと、ワインの特徴を描写する際によく使われる。特にフランスの極上ワインについて述べる時には頻繁に用いられるのだが、一般的に、微気候(ブドウの樹自体の周辺気候)、地味(表土、下層土、排水)、そしてブドウの樹といったブドウ畑の物理的な環境を意味する。シャンパーニュも、もちろん、このテロワールを最も見事に表現しているワインのひとつだ。シャンパーニュというと、軽くてエレガント、切れ味のよい酸味に加えて、長い熟成期間からくる酵母の自己分解風味、そして後味に長く残る複雑で凝縮された香味が特長。それらは同じ栽培者が産した同じブドウ品種から、同じ造り手が、同じ造り方で造っても、畑や村が違うと異なったワインとなる。その違いを生み出すのがテロワールなのだ。

冷涼な気候の中でゆっくり熟すブドウ

シャンパーニュ地方は北緯48~50度に位置し、ブドウ生育期(4~10月)の平均気温が16℃という冷涼な大陸性気候。一方、米カリフォルニアではブドウの樹の生育期間、つまり4~10月の気温で、10℃を超えた分を合計した「積算温度」を目安にその土地に適したブドウ品種を選ぶ方法が用いられている。例えば、積算温度の高い地区の栽培者には、高い気温でなければ完熟しないようなシラー種、グルナッシュ種などを推薦しているわけだ。
シャンパーニュに関していえば、積算温度は1710~1980℃で、カリフォルニアの最も冷涼な地域と比べても400℃ほど低く、そのためにブドウは完熟しにくく、アルコールが低めで酸味が高いワインとなる。しかし、シャンパーニュ地方の初秋は雨が少なく乾燥しているおかげで、ピノ・ノワール、ピノ・ムーニエ、シャルドネといった比較的低い温度でも熟しやすいブドウ品種が時間をかけてゆっくりと熟すことから、果実風味を凝縮させることができるのだ。

シャンパーニュを造り上げる「チョークの大地」


© jbcurio
>20年以上前になるが、ワインの最初の講義で、「ブドウの樹は他の植物や作物が生育しないような水捌けのよい痩せた土地でよく育つ。そこでは、ブドウの樹は根を下層に深く広げ、ミネラルに富む水分や養分を吸い上げるからである。銅、鉄、マグネシウムなどを含むミネラルは、ブドウ果汁を濃厚にし、その結果ワインの風味が濃厚になる…云々」という説明を受けた。
実際、良質なワインは水捌けのよい痩せたチョーク質、または石灰質を多く含んだ土壌から産出され、雑味のないワインが生み出されている。この石灰質土壌だが、実は世界のわずか7%しか存在しないと言われているが、フランス国土の55%が石灰質土壌に覆われていることは実に興味深い。そして、シャンパーニュ地方はというと、「チョークの大地」なのだ。ランスやエペルネの町で、シャンパーニュ・ハウスを訪れたことのある読者なら、地下の白亜のトンネルを見せてもらったはず。古代ローマ人が掘りおこし、今ではシャンパーニュの熟成用に使われている世界遺産となっているトンネルだが、それらはまぎれもなくチョーク質。しかし、シャンパーニュのブドウ畑はシャブリ地方と異なり白くない。というのは、シャンパーニュ地方の表土は浸食によってできた砂、マール、褐炭粘土といった崩積土で、その下が細かく裂けたチョーク質土壌となっており、ブドウの樹は根を下に伸ばし、下層からミネラルと水分を吸い上げ、ミネラル香味いっぱいのブドウを生む。こうしてシャンパーニュ地方で造られるワインは、その長い熟成過程で酵母の自己分解風味が備わり、瓶詰前にドザージュ(砂糖)、そして古いワインが加えられて、酸味とのバランスのとれた、ミネラル香味の後味を呈すエレガントなワインに仕上げられるのだ。
さて、今回もシャンパーニュならではの味覚をご紹介したい。イタリアで生まれたサバヨンだが、カテリーナ・デ・メディチCaterina de' Medici(フランス語読みはカトリーヌ・ド・メディシス)がフランス国王アンリ2世に嫁いだ時にフランス宮廷に持ち込み、これが各地でアレンジされた。シャンパーニュ地方では「Sabayon au champagne」と呼ばれ=写真、ヴァニラやシナモン風味のクリーム状のムースにシャンパーニュを使ってゴージャスに作られている。温かくても、また冷たくしても大変美味。ぜひお試しいただきたいデザートだ。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
e-mail : 
このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

 

2017年 03月 23日

2017年 03月 17日

2017年 03月 22日

2017年 03月 01日