2016年12月8日 |
ご当地ワインと郷土料理&名産物⑲スペイン・カタルーニャ州
日本で愛されるスパークリング・ワイン
クリスマス、年末&新年と祝いの席やパーティーが多くなるこの季節に大活躍するのが、スパークリング・ワインだ。日本においてもスパークリング・ワインの消費量は年々増加しており、食品産業新聞社が毎年まとめている「輸入酒銘柄別ランキング」2013年版によると、スペイン産スパークリング・ワインのカバCava(詳細は後述)を造るフレシネFreixenetがダントツのトップ・ブランドに挙げられている。カバの年間生産量はボトルにして2.4億本だが、65%が輸出され、日本は、ドイツ、ベルギー、英国、アメリカ合衆国に続き5番目に多い輸入国となっている(年間800万本)。
「洞窟」で熟成
フレシネはカバの製造元として最も有名なブランドだが、日本では意外に知られていない老舗ブランドとして、スペイン王室御用達でもあるコドルニウCodorníuがある。実は、スペインで最初にスパークリング・ワインを市場に出したのはこのコドルニウで、1851年のこと。その10年後の1861年にフレシネがスパークリング・ワイン生産を開始している。どちらも、スペイン・カタルーニャ州バルセロナ県サン・サドゥルニ・ダノアに本拠を置いている。
スペイン産スパークリング・ワインは、当初「チャンペン」と呼ばれていたが、フランスのシャンパーニュ地方から抗議を受け、1970年に「カバCava」と名称認定された。「Cava」とはカタルーニャ語で「洞窟」という意味で、当時、スパークリング・ワインが洞窟で熟成されていたことに由来している。一般的なワインとは異なり、製法が法律で決められているために、スペインの全地域で造ることが許されており、約250社によって生産されているのも特徴。とはいえ、99% はバルセロナを州都とするカタルーニャ産で、しかもほとんどはフレシネとコドルニウの2社によって生産されている。
2度の瓶内発酵で生まれる泡
カバは何と言ってもコストパフォーマンスがよいのが魅力。シャンパーニュと同様、ベース・ワインを瓶内で2度発酵させ、その発酵によって生まれた炭酸ガスを瓶内に封じ込め、ワイン中に溶け込ませて造る上質の発泡性ワインながら、値段はシャンパーニュより格段に安い。
ほとんどのカバにはチャレッロ種、パレリャーダ種、マカベオ種の3ブドウ品種が使われている。国際品種のシャルドネ種やピノ・ノワール種も使われるようになったのは1981年とつい最近の話。ちなみに、スペインでもカタルーニャ州以外で造られるカバにはマカベオ種が主に使われている。チャレッロ種はワインの骨格を作り、マカベオ種は果実香を与え、パレリャーダ種は香りに華やかさを与えている。また、カバにはロゼもあり、白のベース・ワインにガルナッチャ種、モナストレル種、ピノ・ノワール種から生産される赤ワインが少量添加されて造られている。
カバと好相性のサフラン
さて、カバと相性のよい名産物といえば、レモンをひと搾りしていただくパエリア。カバのもつ風味が、パエリアに使われる、魅惑的な香りとほろ苦い独特の風味のサフランと抜群のコンビネーションを見せる。パエリアとはスペイン語でフライパンを意味するそうだが、本来、米どころとして知られるスペイン東部バレンシア地方が発祥の地で、米と野菜、魚介類、肉などをフライパンで炊き込んだ料理をいう。だが、ショートパスタで作られるパエリアもあり、フィデウアFideua(カタルーニャ語でパスタ料理のこと)=写真=と呼ばれ、特にカタルーニャ沿岸の地域で人気の料理だ。お米を忘れた漁師が、船の上で作ったのが始まりと言われている。寒い暮れの日、カバとフィデウアで美味なる夕食を楽しんでいただきたいものだ。