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2012年5月31日

●取材・執筆/本誌編集部

 

ツタンカーメン発掘に生涯をかけた男
ハワード・カーター
Howard Carter

 

1922年、世界中の専門家が実在を否定していた
ツタンカーメン王墓が、未盗掘で発見された。
その偉業を成し遂げたのは無名の英国人考古学者ハワード・カーター。
今号では、輝かしい世紀の大発見に隠されたカーターの苦難と悲哀を辿る。

 

 

 時をさかのぼること約3300年前、紀元前14世紀。
 エジプトの首都テーベ(現ルクソール)の町は、深い悲しみに包まれていた。まだ10代後半であったツタンカーメン王の早過ぎる死。先王が強行した宗教改革や遷都などによって国政が混乱していたこともあり、その突然ともいえる不可解な死は、事故死説、病死説、そして暗殺説など、様々な憶測もまた呼んでいた。
 人々が寝静まった頃、松明の光を受けて輝く少年王の棺のそばには、王妃としての威厳を保つべく、今にも目から溢れ出そうになる涙を必死にこらえているアンケセナーメンの姿があった。豪奢な黄金の人型棺には緻密な装飾が施されており、アンケセナーメンはそれをゆっくりと目で追っていく。やがて、王の生前の面差しを写した頭部にたどりつくと、とうとう彼女の視界はぼやけ、大粒の涙が頬を伝ってこぼれ落ちていった。
 2人は幼馴染であった。父王の死にともない、弱冠9歳でツタンカーメンが王に即位するのと同時に結婚。もちろん政略結婚であったが、複数の妾妃を持つのが当然であったこの時代に、ツタンカーメンはアンケセナーメン以外の女性をそばに置くことはなかった。権力闘争の渦巻く王宮にあって、年若き王が唯一心を許せる存在が、2歳年上のこの王妃だったのである。
 アンケセナーメンは亡き夫のもとへとさらに一歩足を進め、手にしていた花束をそっと棺の上に捧げた。
 「花はいつか枯れてしまうけれど、私の心は永遠に貴方のそばに」
 20年に満たない短い生涯を終え、永遠の眠りについたツタンカーメンに向けて、彼女はそう静かに語りかけた。

 

 

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