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2013年7月18日No.788

●征くシリーズ●取材・執筆/根本玲子ロバーツ・本誌編集部

免許不要のセルフ・ドライブ
水上ホテルで征くテムズ

夏のホリデーといえばまず思い浮かぶのが浜辺や
キャンプ地でのひととき…という人も少なくなさそうだ。
家族や友人と過ごす休暇はかけがえのない思い出。
ただ、いつも同じでは面白くない。
今年はひと味違うホリデーにしてみたい、そんな方のために、
とっておきの冒険気分が味わえてしまう
ボートでの週末旅行をご紹介したい。

 

自分の意思で動かせる『水上ホテル』

 東京なら花火でおなじみの隅田川、パリを横切るセーヌ川、そしてロンドンを蛇行して流れるテムズ河―。そよ風を感じつつ、普段見慣れた街を水上から眺めるのはなかなかオツなもの。名所を結ぶテムズ河の遊覧船や、産業革命時代に大いに発達した運河をゆったりと進むカナル・ボートに乗った経験のある読者の方も多いことだろう。
テムズ河や運河では、家族連れ、あるいは友人同士で船旅を楽しんでいると思われるボートとしばしばすれ違うが、それらが「セルフ・ドライブ」の貸しボートであるケースは珍しくないという。
実は、テムズ河も運河も、ボートを借り、自分たちで操縦して航行することができるのだ。
「そんなことできるの?」「借りるのが難しそう」と身構えてしまいそうだが、ボートのレンタルは思ったよりカンタン。ホテルをおさえるような要領で予約できてしまう。
何より、操縦時に免許が不要といい、それを初めて知った時は耳を疑った。成人がそばについていれば子供さえ舵(かじ)を握れると聞いてさらに驚いた。「車の運転さえしたことないのに、船の操縦なんてできっこない」という人も心配ご無用。レンタル時に短時間のレッスンを受けるだけで操縦できるようになる。ボートはそれほどスピードが出ないようになっているし、しばらく操縦しているうちに慣れてしまう。
また、キャンパー・バン(キャンピング・カー)に乗るようなもので、キャンプ場のテントで過ごすのとは違い雨天でもしのぎやすいだけでなく、ボートは一般的にベッドから、冷蔵庫付きキッチン、トイレ&シャワーまで備えていて、まさに至れり尽くせり。
そしてもうひとつ、費用の面でもリーズナブルなホリデーになる可能性が高い点も記しておきたい。例えば、大人2人、子供2人の4人家族が2~3泊でヨーロッパに出かけるとなると、往復フライトとホテル代だけで1500ポンド近くかかってしまう場合がほとんどだろうが、セルフ・ドライブのボートのレンタル料なら(もちろんボートによるが)夏でも1000ポンドでおつりがくる。
船の旅は車のように座席に縛り付けられることもなく、くつろぎながら移動できるのが特長。前述のようにトイレやキッチンがあるだけでなく、ボートによってはちょっとしたホテル並みの内装を備えているものまであり、その気になればパーティーだって催すこともできる。ホテルを選ぶ気分で、恋人たちのロマンチックな逃避行(?)から、友だちや家族とワイワイいく賑やかな冒険旅行、熟年夫婦の優雅な週末ホリデー、そして、お好みなら1人で静かに過ごす孤高のひとときまで、様々なニーズにあった旅を選ぶことができるのはありがたい。
期間も、1週間単位の長期ホリデーにはじまり、週末ミニ・ブレイクや1日レンタル、数時間のレンタルなどにも対応しているレンタル会社が複数ある。
そしてなによりも自ら船長となってボートを操縦すれば、単に「乗せてもらう」よりずっと思い出に残るホリデーになるはず。繰り返しになるが、敷居は意外に低いので、いつもと違った旅をしてみたい向きだけでなく、アウトドア初心者にもオススメしたい旅行スタイルといえるだろう。

 

テムズ河やロンドン近郊の水路を制覇

 では、いったいどこまで足を伸ばすことができるのだろうか。
水路交易が栄えた歴史から、大都市ロンドン近郊には多くの運河が存在するが、これらはロンドン中心部とその周辺だけでなく西はブリストル、北はリバプールやヨークシャーまで伸びている。また英国を代表するテムズ河も水源をさかのぼればグロスターシャー、そして下れば北海までたどり着く。車に比べればスピードは落ちるが、移動できる範囲は思いのほか広いのだ。
また水上から眺めるイングランドは、普段とはまったく別の顔を見せる。ロンドン中心部ではコンクリートで固められている河岸も、すぐにのどかな田園風景へと変わり、忙しく行き交う観光船は徐々に姿を消す。のんびりと釣り糸を垂れたり散策したりする人々、昔ながらの面影を残すロック(水門)、河に面した「入り口」がある家々、河岸に並べられた大小のボート…眺めていて飽きることがない。そして、ロックを越えるたびに皆で協力しあったり、他の船に乗った「隣人」たちとおしゃべりに興じたりといった様々な体験や出会いも待っている。
気に入った場所をみつけたら、ほとんどの場合そのまま係留OKであることもセルフ・ドライブならではの醍醐味。河や運河沿いにたたずむパブ、ティールームに立ち寄ったり、ボートを拠点にウォーキングやサイクリングに出かけたりできるなど、自由度が高いこともつけ加えておきたい。
さらに、テムズ河であればウィンザー城にハンプトン・コート宮殿、テーマパークのレゴランドなどロンドン近郊だけでもかなりの観光スポットが点在し、これらもプランに組み込むことができる。もっと冒険したい時には「島」に上陸するのも一案。いわゆる中州だが、ここに上陸できるのもボート旅行者だけの特権だ(個人所有の中州は除く。表示があるのですぐに見分けがつく)。
目的地に到達する喜びが味わえるだけでなく、旅の道中を楽しむことができるボート旅行。秘境まで出かけなくても、ちょっと足を踏み出すだけで冒険はできてしまうのだ。後半ページでは週末プチ冒険実践編とそのコツについてご紹介する。二の足を踏んでいてはもったいない。さあ、冒険旅行に出かけよう!

 

 

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