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【征くシリーズ】Holiday

2017年6月15日 No.988

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~ロンドン近郊!丘に広がる紫色の世界~ヒッチン・ラベンダーを征く

ロンドン近郊!丘に広がる紫色の世界

ヒッチン・ラベンダーを征く

力強い香りと美しい色を誇り、様々な薬効にすぐれ、「ハーブの女王」「香りの女王」とも呼ばれるラベンダー。その鮮やかな紫色と豊かな芳香が一面に広がるラベンダー畑が、ロンドンから北へ車で約1時間半走った場所にある。シーズンが始まったばかりのヒッチン・ラベンダーをご紹介しよう。

●征くシリーズ●取材・執筆・写真/ネイサン 弘子・本誌編集部

ふたりの女王を魅了したラベンダーオイル

2012年、ヒッチン・ラベンダーのオイルなどが
エリザベス女王に献上された。
ランサム家は、ヒッチン・ラベンダーに現在かかわっていないが、
その伝統は確かに受け継がれている。
エリザベス女王即位60周年「ダイヤモンド・ジュビリー」を迎えた2012年。英国中が祝賀ムードに沸いた。
国民とその喜びを分かち合うべく、英国各地で執り行われた記念行事に出席しつつ、国内を周遊したエリザベス女王は6月14日、ハートフォードシャーの小さな町、ヒッチンを訪れた。
この時、目にも鮮やかなラベンダー色の衣装に身を包んだエリザベス女王を、緊張の面持ちで迎えたひとりの青年がいた。青年は、ヒッチンで採取されたラベンダーと、ヒッチン・ラベンダーのオリジナル・ラベンダーオイルが入ったバスケットを女王に献上したのだった。青年の名はセオドア・ダイTheodore Dyeという。
エリザベス女王を含め、その場に居合わせた多くの人々は、ヒッチンのラベンダーとふたりの女王との、時空を超えた繋がりを目の当たりにし、さぞや感慨深かったことだろう。
もうひとりの女王とは、エリザベス女王の曾祖母であるヴィクトリア女王である。
時をさかのぼること161年前。ヒッチンの鉄道駅で先述の青年と変わらぬであろう緊張の面持ちで、ヴィクトリア女王を迎えた人物がいた。この男性こそ、2012年エリザベス女王にラベンダーオイルを献上したセオドア青年の先祖、ウィリアム・ランサムWilliam Ransomだ。
英国でも最も古い自営薬局のひとつといわれる店を経営していたウィリアムは、ヒッチンのラベンダー栽培普及に尽力し、ラベンダーオイルを精製、販売していた。ウィリアムの精製する上質なラベンダーオイルは、薬局で販売されるだけでなく、他社ブランドにも盛んに提供されるなど、人気を博していた。
1851年。ヴィクトリア女王が乗車する特別列車がヒッチン駅に停車。ウィリアムは自ら精製したラベンダーオイルをヴィクトリア女王に献上した。この時ウィリアムは、誇らしさで胸がいっぱいになったに違いない。しかし、未来の世界で、自分の子孫が、再び英国君主にラベンダーオイルを手渡す日がくるとは、夢にも思わなかったのではなかろうか。
実際、ヒッチン・ラベンダーが歩んだ道は平坦なものではなかった。

ラベンダーの種類

ラベンダーといえばフランスの印象が強いが、南欧、アメリカ、アフリカからアジアに至るまで、世界各地に39品種が存在する。さらに、効能や芳香の違い、観賞用、採油用などに改良された変種は約100種類もあるとされ、ヒッチン・ラベンダーのディスプレイ・エリアでは、60種以上のラベンダーを栽培している。英国で主に栽培されている人気の品種をご紹介しよう。

Lavandula angustifolia
ラバンデュラ・アングスティフォリア

ラバンデュラ・アングスティフォリア

ヒッチン・ラベンダーのディスプレイ・エリアで栽培されている系統の品種。別名「イングリッシュ・ラベンダー」とも呼ばれ、耐寒性に優れているため、英国各地で広く栽培され、伝統的な英国風庭園の必須アイテムにもなっている。日本でも北海道で多く栽培され、中でも富良野のラベンダー畑が有名だ。 花茎が長く葉が花の下のほうについているので、ドライフラワー作りにも向いている。


Lavandula latifolia
スパイク・ラベンダー

スパイク・ラベンダー

イングリッシュ・ラベンダーよりも背丈が高く、葉も大きく、花の色は淡い。暑さに強く「男のラベンダー」の異名を持つ。


Lavandin
ラバンディン

ラバンディン

ヒッチン・ラベンダーのメイン・フィールドで栽培されている品種。芳香と採油率を高めるために作られた「イングリッシュ・ラベンダー」と「スパイク・ラベンダー」の交配種。暑さにも寒さにも強く、大きく育ちやすい。英国では病気に強い採油用品種としてさらに改良された「ラバンディン・グロッソ(Grosso)」、最高級のオイルが採れる「ラバンディン・ヴェラ(Vera)」の人気が高い。


Stoechas Lavender
ストエカス・ラベンダー

ストエカス・ラベンダー

別名「フレンチ・ラベンダー」、「バタフライ・ラベンダー」と呼ばれ、花房は太めで、先端がウサギの耳のようになっているのが特徴。暑さには強いが寒さにはやや弱く、半耐寒性。

失われたラベンダー畑の復活

8月のヒマワリの開花にあわせて訪れるのも一案。
ヒマワリとラベンダーの色の対比が、なんとも鮮やか!
真っ青な空を背景にどこまでも続くラベンダー畑といえば、南フランスのプロヴァンス地方を思いうかべる読者も多いだろう。だが実は、イングランドはフランスに並ぶ、ラベンダーの一大産地であることは、存外知られていない。
小ぢんまりとした市場の街だったヒッチンは、イングランドを代表するラベンダーの産地として、16世紀よりラベンダーの栽培が盛んに行われていた土地であった。ところが20世紀に入ると、生産コストの高騰に加え、量産されるブランド価値の高いフランス産ラベンダーの勢いに押され、ヒッチンにおけるラベンダー栽培は衰退の一途を辿ることになる。
失われたラベンダー畑の景色をこの地に復活させたのは、この地で5世代、100年以上に渡り農場を経営してきた「カドウェル・ファームCadwellFarm」だ。花から採れるエッセンシャル・オイルの採取を目的に、ラベンダー栽培をはじめたのは2000年のこと。その美しさは地元住民の間で瞬く間に話題となり、見物客が訪れるようになった。
一般公開することで観光客を呼び、雇用につながるなど、地域の活性化事業としての期待の高まりに応え、2009年より夏季シーズンに「ヒッチン・ラベンダー」として、一般公開されるに至ったのである。
ラベンダー畑の風景を満喫できるだけなく、ラベンダー摘みも楽しめるのがヒッチン・ラベンダーだ。25エーカーの緩やかな丘に、全長25マイル(約40キロメートル)に及ぶラベンダーの株が、美しいラインを描いて並び、紫の帯がまるで空まで続くような光景が広がる。
今では年々拡大するラベンダー畑の隣にヒマワリも栽培され、ラベンダーの紫と例年8月中旬頃に見ごろを迎えるヒマワリの黄色との鮮明なコントラストも楽しめるようになった。さらに、17世紀の納屋を改装したカフェでは、軽食のほか、ラベンダーの風味を生かしたケーキやアイスクリームなどが味わえる。また、オリジナルのラベンダー商品やラベンダーの植木が並ぶショップも併設され、毎年数万人の観光客が訪れる、注目の観光農園へと成長している。

ラベンダーの主な効能

不安やストレスを軽減するリラックス効果
火傷や傷を治す消毒効果
皮膚の機能を回復させ、湿疹やニキビなどを軽減する効果
抗酸化物質による老化防止作用
頭痛沈静効果
生理不順を改善する通経作用
(※子宮の内部のものを押し出すという作用があるとされているので、特に妊娠初期の女性は注意が必要とされている)

紫色の夢の世界へ

現地では、ラベンダーの鉢を購入することも可能。
大きさにより、2.95~9.95ポンドまで各種あり
(勝手に持って帰らず、必ずお支払いを!)。
さて、このヒッチン・ラベンダーを訪れた当日のことをご報告することにしたい。
北ロンドンを出発した車は一路A1を北上。ルートン空港からもほど近いロケーションで、筆者の自宅からなら約1時間、ロンドン中心部からでも1時間半ほどという距離だ。訪れたのは、ラベンダーが花盛りを迎えた昨年の7月中旬。カラリと晴れ渡った空の下、ヒッチンの市街地を通り過ぎると、数分でヒッチン・ラベンダーへの入り口の表示が現れた。
見落としてしまいそうな小さな看板が立つ入り口を入ると、風にのって微かに香ってくるラベンダーの芳香に、思わず深呼吸。今から十数年も前だろうか、日本で南仏旅行ブームが起きた頃、テレビや雑誌で目にした憧れのラベンダー畑が、我が家からわずか1時間のところに広がっているとは! 抑えようとしても思わず期待がふくらんでしまうのを感じつつ、駐車し、敷地内を歩き始めた。
まずはカフェの近くにある柵に囲われたディスプレイ・エリアへ。ここでは60種類ものラベンダーが栽培されている。改めてその種類の多さに驚きながら、色や形の異なるラベンダーを見比べるのも興味深い。
そしていよいよ、畑の『ふもと』に向かう。小屋風の建物で料金を支払い、ピッキング用の紙袋とはさみを受け取り、いざ、ラベンダー咲き乱れるフィールドへ!

入場料を支払うと、ひとりにつき紙袋ひとつとはさみが手渡される。
紫色のラベンダー=写真左=やホワイト・ラベンダー=同右=など、
ついつい欲張ってしまいそう。追加の紙袋を購入することも可能。
なだらかな斜面に畑が広がるヒッチン・ラベンダーは、ふもとから見上げる景色と、頂上部から見下ろす景色という、ふたつの異なった眺めが楽しめるのが最大の魅力だ。
ふもとからラベンダーの株の間に足を踏み入れ、緩やかな斜面を、ラベンダーを摘みながら上って行く。蜜を求める蜂が人間には無関心な様子で飛び回っている(余計な刺激は与えないようにしよう)。足下の満開のラベンダーを摘むのに夢中になっていた時、ふと顔を上げると、どこまでも続く緑色の田園風景の上に、紫色の巨大なスカーフを広げたような、まさに息をのむほどの風景が広がっていた。
頂上に着くと、芝生の広場にベンチが設置され、家族連れがラベンダー畑を見下ろしながら楽しそうにピクニックの食事を広げていた。お弁当を準備してピクニックとしゃれこむもよし、手ぶらで来てカフェで食事をするもよし、というところ。食事のあと、カフェでのティー・タイムを満喫するのもお勧めだ。
なお、ラベンダー畑には日陰がほぼないので、晴れた日には帽子を被るのを忘れないようにしたい。
紫ラベンダーを堪能した後は、白い花が可憐なホワイト・ラベンダー畑へ。珍しいホワイト・ラベンダー、さらには所々に咲く、摘み取りが許可されている野の花も摘んでいっぱいになった袋を手に、大満足でラベンダー畑を後にした。
帰りにショップでラベンダー風味のチョコレートなどの特製品を購入。レジは長蛇の列だったが、日本へのお土産にぴったりの品が手に入り、並んで購入する価値ありと思えた。
持ち帰ったラベンダーは帰宅後、束にまとめ、屋内にぶら下げてドライ・フラワーにしてみた。紙袋2袋のラベンダーで、6束ものドライフラワーが完成。それらの束は夏中、かぐわしい香りを放ち続けたのだった。
あれからラベンダーの香りをふと感じるたびに、ヒッチンのラベンダー畑の風景を思い出すようになった。「またあの景色を見に行こう」と、次回の訪問に想いを馳せている。今年もぜひ行きたい!
ロンドンから日帰りで行ける、紫色の夢の世界へ、皆さんも気軽に出かけてみてはいかがだろうか。
※開花状況はヒッチン・ラベンダーのフェイスブック、またはホームページでご確認ください。

ラベンダーの香りに包まれながら体験したいイベント各種

ヒッチン・ラベンダーでは、シーズン中、毎年好評の野外シネマをはじめとするイベントが各種開催されている。ラベンダーを様々な角度から満喫できそうだ。詳細はヒッチン・ラベンダーのフェイスブックでご確認を。
*野外シネマでは、閉園後に野外スクリーンを設置し、観客はブランケットや持ち込みのデッキ・チェアなどに腰掛け、ピクニックを楽しみながら映画鑑賞ができる。黄昏色に染まる空の下、ラベンダー香るフィールドで、開放的な気分に浸れると好評だ。
*野外シネマの他にも、今シーズンはアウトドア・ヨガ・クラス、メディテーション・クラス、音楽ライブ、クラフト・ワークショップ、写真教室などの開催が予定されているほか、今後もイベントが追加される可能性もあり。
Summer Sundown Cinema
2017
日程
8月13日 (日)午後9時:The Matrix (15)
8月17日 (木)午後9時:Hot Fuzz (15)
8月18日 (金)午後9時:Top Gun (12A)
8月19日 (土)午後9時:Dirty Dancing (15)
8月20日 (日)午後9時:Grease (PG)
料金 £13~£13.50
チケットの予約 www.sundowncinema.co.uk
その他のイベントについて www.facebook.com/HitchinLavender

Travel Information

※2017年6月12日現在のもの。

Hitchin Lavenderの地図

Hitchin Lavender

Cadwell Farm
Ickleford, Hitchin
Herts, SG5 3UA
Tel: 01462-434343
www.hitchinlavender.com
http://hitchin-lavender.blogspot.co.uk

【左上】ラベンダー&ハニーのケーキ。
ラベンダー入りショートブレッドなどもある。
【右上】ラベンダー製品が数多く並び、
ついあれもこれもと買いたくなってしまう…。
【下】ショップの奥がカフェの屋内部分となっている。

アクセス

【車】ロンドン中心部より約40マイル(64キロ)、約1時間30分。A1(M)またはM1を北上することになるが、A1(M)を使ったほうが高速道路を下りてからの距離が短い。A1(M)使用の場合、カーナビではジャンクション9で下りるように指示される可能性が高いようだが、10で下りたほうが距離的には少し遠回りになるものの、細い曲がりくねった田舎道を走らずに済むので運転しやすい。
【電車】King's Crossよりナショナル・レールでLetchworth Garden City下車。バス53番でIcknield Way Cemetery下車、ここから徒歩20分。

開催期間

2017年5月27日(土)~9月3日(日)
※開園最終日は変更になる可能性あり。
毎日:午前10時~午後5時
火曜:午前10時~午後9時
※ラベンダーの花の見ごろは6月中旬~8月下旬。ヒマワリは8月中旬~下旬

料金

大人:£5(ピッキング込み)
14歳以下:£1
5歳以下:無料
ピッキング用の追加の袋:£3

 

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