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2014年3月6日 No.820

●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部

 

断頭台に散った、9日間の若き女王
レディ・ジェーン・グレイ

エリザベス1世が即位する4年前の1554年2月。
ロンドン塔に幽閉されていた「前女王」が処刑された。
権力闘争と宗教対立という時代の荒波に翻弄され、
突如女王にまつりあげられた時の彼女は弱冠15歳。
しかし、わずか9日後にその座から引きずり下ろされ、反逆者として投獄された。
今号では、「9日間の女王 9 Days Queen」と呼ばれた
レディ・ジェーン・グレイの儚くも劇的な生涯を追ってみたい 。

【参考資料】『悲劇の9日女王ジェーン・グレイ』桐生操著、中経出版/『9日間の女王さま』カーリン・ブラッドフォード著・石井美樹子訳、すぐ書房/『Prisoners of the Tower』Historic Royal Palaces ほか

 

 

差し伸ばされた華奢な手

 ロンドンのトラファルガー広場に面して建つ、ナショナル・ギャラリー。
世界有数の名画コレクションで知られる同館の1つ目の正面階段をのぼり、右手の扉を通り抜けると、18~20世紀初期の絵画が飾られているエリアにたどり着く。ゴッホの『ひまわり』やモネの『睡蓮』などが出迎えてくれる中、さらに足を進めていくと、最奥の「展示室41」で強い存在感を放つ大きな1枚の絵が目に飛び込んでくる。
『レディ・ジェーン・グレイの処刑The Execution of Lady Jane Grey』(上掲)
描かれているのは、純白のドレスに身を包み目隠しをされた乙女が、白く華奢な手を伸ばし、これから己の首を切り落とすために使われる断頭台を探している姿。波打つ豊かな髪は滝のように肩へと流され、斬首しやすいようにドレスの襟元は大きく開けられている。壮年の男性が女性の身体にそっと手を添えて断頭台へと導こうとしており、取り乱した侍女たちは柱にすがって泣き崩れたり、気を失ったりしている。じっと見続けていると、やがて震える手で断頭台を探し当てた彼女がゆっくりと首を台にのせ、最期の祈りの言葉を唱える静かな声、そして処刑執行人によって勢いよく振り下ろされる斧の風を切る音までもが聞こえてきそうだ。
鮮烈な印象を与えるこの絵は、16世紀に実在した女性、ジェーン・グレイ(1537~54)の処刑の様子を想像で描き出したもの。執行の場となったのは、王位をめぐる争いや外国との戦争という数々の血なまぐさい歴史の舞台となった地、ロンドン塔。数え切れないほどの囚人が同地に投獄され、獄死や、断頭台の露と消える憂き目にあったが、ジェーンもその一人であった。享年16。罪状は君主に対する「反逆罪」である。
由緒正しき血筋に生を受け、敬虔な信仰心と気品を備え、「イングランド一の才女」との呼び声も高かったとされるジェーン。まだ少女といえる年齢であった彼女に、「反逆」など大それたことが、本当にできたのだろうか?



ブラッドゲート・パークに建つ、ジェーンの生家ブラッドゲート・ハウス跡。
© Bradgate Park Trust 。

 

 

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