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2014年7月3日 No.837

●サバイバー●取材・執筆・写真/名取由恵・本誌編集部

 

大人も子供もタップリ楽しめる
野外フェスに行こう!



先月21日に夏至を迎え、いよいよ待ち望んだ夏がやってきた。そして音楽ファンにとっては、夏を象徴するイベント、野外フェスティバルの季節の到来だ。
自然の中でキャンプを楽しみながら、数日間にわたって繰り広げられる多くのバンドのライブに酔いしれてみたい! でも実際に行くのは不安…という人も少なくないのでは?
今号では、先月末に大盛況のうちに幕を下ろした英国最大の野外フェス「グラストンベリー・フェスティバル」を例に、夏の野外フェス攻略法をお届けしたい。

 

起源はケルト人の夏至祭

 英国の夏は美しい。明るい太陽の光と涼やかな風、咲き競う花に緑鮮やかな芝や木々。夜は9時過ぎまで明るく、ビール片手に日光浴を満喫したり、ピクニックを楽しんだりと、人々は屋外でゆっくりと時を過ごす。暗くて長い冬を越え、やって来る夏の心地よさは格別だ。
音楽ファンにとって、夏は野外フェスティバルの季節である。数万人が集まる有料の大型フェスから、地元バンドが出演する地域密着型の無料フェスまで、その規模やスタイルはさまざま。野外フェスの起源は遥か古代に遡り、自然を崇拝するケルト人の夏至祭に由来するともいわれている。太陽が天球上で最北に位置する夏至の日は、北半球では一年で最も昼が長くなり、この日を過ぎると本格的な夏が始まるとされる。 人々は夏の到来を祝い、町の広場に集まって一晩中歌ったり踊ったりして夜を明かす。現在でも北欧を中心に夏至祭を行うところは少なくない。
複数のバンドがステージで演奏するスタイルの野外フェスが人気を集めるようになったのは、ベトナム戦争への反対運動を発端に、『ラブ&ピース』を提唱するヒッピー・ムーブメントが高まった1960年代後半のこと。反戦を叫び、伝統的な社会制度を批判し、自然と平和と歌を愛して自由に生きることを目指した米国の若者たちが集い、1967年にはカリフォルニアで「モントレー・ポップ・フェスティバル」、1969年にはニューヨーク州で「ウッドストック・フェスティバル」が行われた。英国でも1968年に「ワイト島フェスティバル」が開催されている。
さて、現在世界最大級の野外フェスといえば、何といっても英国の「グラストンベリー・フェスティバル(正式名称はGlastonbury Festival of Contemporary Performing Arts)」(以下、グラストと略す)だろう。
毎年6月下旬の夏至の日に近い週末に開催されるグラストは、約900エーカー(約360ヘクタール、東京ドーム約76個分)の敷地に20万人余りの人々が集まる大規模なものだ。会場は英国南西部サマセットのピルトン村近郊にあるワージー農場(Worthy Farm)。ここはフェスの主催者、マイケル・イーヴィス氏所有の農場で、イベントの開催期間以外は牧畜が行われている。
会場近くにあるグラストンベリーの町は、アーサー王伝説やキリスト教、ケルトの伝承とも縁のあることで知られ、塔のような旧教会がそびえたつ「グラストンベリー・トー」と呼ばれる神秘的な小高い丘は、フェスの会場からも目にすることができる。考古学的にもスピリチュアリティ的にも深い意味をもつ『巡礼の地』は、音楽ファンにとっても他に類を見ない『聖地』となっている。

 

 

自然と共生する「現代の理想郷」

 第1回のグラストが開催されたのは、1970年9月。ヒッピーに影響を受けた農夫のイーヴィス氏が始めた「ピルトン・ポップ・ブルース・フォーク・フェスティバル」がそれである。当時は入場無料で、入場者数は1500人程度だった。80年代に入ると、核廃絶運動の団体「CND」と提携して「CNDフェス」という名称に変更。90年代になってフェスの規模が大きくなると、無断入場者の急増や麻薬、盗難などの犯罪が増加したため、2000年に大手プロモーターのミーン・フィドラー・グループ(現フェスティバル・リパブリック)が運営に参入することになった。英公共放送「BBC」局がフェスの模様を中継するようになって知名度が一気に高まり、英国のみならず世界中から海を越えて人々が集まってくるまでに成長した。ちなみに、グラストは現在OXFAM、ウォーターエイド、グリーンピースの3つの慈善団体の活動を支援している。
グラストは広大な敷地で行われる。会場の端から端まで歩けば、1時間近くかかるだろう。
メインステージの「ピラミッド・ステージ」やサブステージの「ジ・アザー・ステージ」の他にも幾つものステージがあり、多数のバンドが出演する。しかしながら、こうした音楽は数あるアトラクションのひとつにすぎない。他にも、シアター&サーカス・エリア、子供の遊び場キッズ・フィールド、映画が上映されるシネマテントなどが立ち並び、ダンスエリアでは夜を通して人々が踊りまくる。また、会場奥にあるグリーン・フィールドは、ヒッピー・オルタナティヴ色が強いところ。地球にやさしく持続可能な暮しを提唱するグリーン・フィーチャー、ヨガやマッサージなどを体験できるヒーリング・フィールドがあり、セイクリッド・スペース(聖地)といわれる小高い場所にあるストーンサークルは、日の出や日没を眺める人々でにぎわう。ヒッピーに強い影響を受けたイーヴィス氏がグラストをスタートしたことを考えると、「自然に囲まれ自然と共生する」という姿勢を体現したグリーン・フィールドこそ、『グラストのソウル』ともいえるだろう。
夏至の直後、緑豊かなサマセットの地に突然現れる巨大なコミュニティ。ライブを見て過ごすのもよし、夜を徹して踊るのもよし、子供と一緒にキッズ・フィールドで1日中遊ぶのもよし。老いも若きも、ヒッピーもヤッピーも、誰もがそれぞれのやり方で思い思いに数日間を過ごす。それが現代の理想郷、グラストなのだ。英国で野外フェスの夏を一度体験するならば、その舞台に来年45周年を迎えるグラストを選んでみてはいかがだろうか。

 

 

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