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No.992 7月13日発行号

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英国に関する特集記事 『サバイバー/Survivor』

2017年3月2日 No.973

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在英邦人への影響を探る EU離脱を選んだ英国

在英邦人への影響を探る

EU離脱を選んだ英国

51.9% 対 48.1%―。
その差、わずか3.8%。
英国がEU離脱を選んだ国民投票の結果が世界に驚きをもって伝えられてから8ヵ月余り。
いよいよ離脱に向けて本格交渉が始まろうとしている。
今号では、「予想は困難」と承知しながらも在英邦人、および在英日系企業に対象をしぼり様々な声を集めてみることにした。

●サバイバー●取材/本誌編集部

去る2月9日。
国民投票に際しては明確に「離脱支持」を打ち出していたデリー・テレグラフ紙の一面を、テリーザ・メイ首相の満面の笑顔が飾った。
同首相の笑顔が紙面にこれほど大きく掲載されるのは珍しい。
笑顔の理由は、下院で行われた投票で、EUからの完全離脱、いわゆる「ハード・ブレグジット(hard Brexit)」をめざす英政府案を494名の国会議員が支持したことにある。反対派の122票をおさえての大勝で、英国はいよいよ荒波にこぎだすことになった。
国民投票の再実施を望む動きや、国民投票の結果は法的拘束力がないとしてその無効化を訴える試みなどもなされたが、メイ首相の固い信念の前にはすべて「悪あがき」に終わった。
それほどまでにメイ氏の「ハード・ブレグジット」への思いは強い。6月23日の国民投票を前に、メイ氏は「残留派」支持を表明していたものの、派手に動くことはしなかったのも、当時のキャメロン首相をたてていただけで、内心は「離脱派」だったのではないかと勘ぐりたくなる。
既に抜群の反射神経も見せており、西側諸国の中では一番にトランプ米大統領と会談するなど、これからも必要に応じてメイ首相は機敏に動くはずだ。
英国民は、この首相にすべてを預けて見守るしかない。
もちろん、メディアや各界の有識者は英国民の不安を代弁しつつ、首相に多くのことを望み、時には強く批判することになるだろう。しかし、前線で実際に戦うのはメイ氏率いる現政権である。その健闘を祈るばかりだ。
インドには、次のようななことわざがある。
No crowd ever waited at the gates of patience.
(「忍耐」という門の前では誰も群がらない)
誰も好きこのんで忍耐の必要な困難な道を進みたがらない、しかし、その道をいった者は成功するとの意味だという。
英国は今、「忍耐」の門の前に立たされている。
在英国日本国大使館イメージ

在英国日本国大使館

日系企業を含む経済活動などに
悪影響を及ぼさないよう、英国に期待

在英国日本国大使館としては、昨年6月の国民投票の結果を踏まえ、英国のEU離脱に向けた関連動向を注視し対応してまいりました。
また日本政府は、昨年9月に「英国及びEUへの日本からのメッセージ」(首相官邸ウェブサイト※で公開中)を公表し、日系企業を含む経済活動や、世界経済に悪影響を及ぼすことのないよう、英国及びEUに対して求めてきました。
先般のメイ首相の演説等に見られるとおり、英国政府は、可能な限りの予測可能性を提供したいとした点や、英国・EU間における市場の一体性の確保、急激な制度変更の回避等を重視し、自由貿易推進の立場から英国がEU離脱後も自由で開かれた世界経済システムの拡大・推進に向け努力する意思を示した点等、我が国が伝達した日系企業の声を真剣に受け止めたものと評価しています。
今後、EUとの交渉等を通じ具体化されていくとともに、引き続き日系企業を始めとする全てのステークホルダーの声に耳を傾けることを期待します。
当館としては、本件に関する今後の動向を一層注視し、日系企業や在英邦人の皆様の御懸念・御要望を踏まえながら対応していく所存です。
首相官邸ウェブサイト: 英国及びEUへの日本からのメッセージ
英国における在留邦人の割合 (2015年10月1日現在)
英国における在留邦人の割合イメージ
アーンスト&ヤングイメージ

アーンスト&ヤング(英系会計事務所)

Tier2カテゴリーの申請条件、緩和への期待は非現実的か

離脱後のEU国民の取り扱いは?

英国のEU離脱後のEU国民(およびEU内に居住する英国人)の取り扱いについては、現時点では予想の域をでませんが、自由移動の権利を引続き保障するか、あるいは破棄するかが大きな論点となっています。離脱後はEU国民への特別措置が設けられることも予想されますが、条件等は明らかではありません。可能性として、特定の期日までに英国に「EU条約に基づいて居住している」ことの証明の提示などが挙げられます。
現在条約に基づいて英国に居住するEU国民には、EU条約に基づいて英国に居住している証明となる書類の準備、または条件を満たすことが出来るならば登録証、永住権や国籍を取得することをお勧めしています。EU離脱後も、英国に引続き居住することを確実に保障出来るものは「英国籍の取得」のみですが、書類の準備や登録証、永住権の取得も将来的に役立つ可能性はあります。
尚、英国で就労していない自己充足的生活者は、充分な生活資金の証明と併せて、総合疾病保険に加入されることをお勧めします。 将来的には、EU国民が英国で就労するためには何らかの規制が設けられることが予想されますが、一つの可能性としては、一般の外国人同様にビザの取得が求められるようになることが考えられます。従って、企業はEU国民の雇用に伴うコスト、あるいはEU外からのリソース確保の可能性などを踏まえて、現在の人材採用・活用を見直す必要があると言えます。
今後は低スキルのEU労働者減少の埋め合せとして、ポイント制のTier 3カテゴリーの活用なども考えられますが、最近のテレサ・メイのスピーチからも判るように、Tier 2カテゴリーの緩和を期待することは余り現実的とは言えません。
Website: www.ey.com
日立イメージ

日立

事業への影響を慎重に評価し、対応を検討

為替や金融市場の混乱など、不確実性が高い状態が当面継続すると思われますが、当社への影響は限定的です。
鉄道事業では、英国の「Hitachi Rail Europe」、イタリアの「Hitachi Rail Italy」「Ansaldo STS」により、欧州全体をカバーする事業体制を既に確立しています。英国では、IEPなど約1,630両の受注があることに加え、今後5年間で2,000両以上の需要が見込まれており、英国だけで数年はフル稼働が続く見通しです。欧州大陸については、買収した「Hitachi Rail Italy」「Ansaldo STS」の拠点を活用していきます。両社は、買収以降も着実に受注を積み上げ、約1.2兆円の受注残を抱えており、各地の拠点を活用しながらグローバルに事業を展開していきます。
原子力事業では、英国のエネルギー政策上、原子力発電はベースロード電源と位置付けられており、ホライズン・プロジェクトも英国内のプロジェクトであるため、EU離脱や政権交代が直接的に大きな影響を与えることはないと考えています。
英国における英国外からの調達や日本からの輸出に係る関税、欧州域内における人財の流動性などは、今後交渉が行われる経済協定等の内容次第ですが、英国政府としても経済への影響を最小化すべく最大限努力されるものと考えています。今後も、当社の事業への影響を慎重に評価し、対応を検討していきます。
Website: www.hitachi.co.jp(日本)/ www.hitachi.eu/en-gb(英国)
ホンダイメージ

ホンダ

今後も英国での事業を継続

1年後、拠点を英国から移される確率は?

― 想定していません。

ハード・ブレグジットは、御社にとってビジネス・チャンスとなり得るか?

― 環境や条件が不明確な状況に対して、コメントすることはできません。

メイ首相率いる政府は交渉役として期待できるか?

― 英国の経済、及び英国進出企業が、今後も継続的に発展できるような環境を実現してくれることを期待しています。

今後の対応について

― ブレグジットがいかに実現されるかは、現時点では明確ではありませんので、今後の展開を慎重にモニターしていきたいと考えています。ただ、言えることとしては、英国にあるスウィンドン工場が10代目「Civic Hatchback」のグローバル生産拠点としての役割を果たしていくことに変更はなく、今後も英国での事業を継続していきます。
Website: www.honda.co.jp(日本)/ www.honda.co.uk(英国)
Baker McKenzie.に聞く

ハード・ブレグジット在英邦人のビザはどうなる?

Q ハード・ブレグジットにより、ビザの締め付けはさらに厳しくなる?

英国の欧州離脱によってもたらされる正確な影響は、未だに定かではありません。
しかし、メイ首相は2月初めの演説にて、英国はEUとの離脱交渉の初期段階で同意に達し、すでに英国に居住するEU国籍者(とその家族)の権利を保護することを優先目標とする、と表明しました。それに加え、英国は非EU諸国からの移民流入を抑制しつつも、優秀な外国人材の積極的活用を主眼とする旨を示しました。
また、英国には非EU加盟国との貿易協定を自由にとり決める権利があり、メイ首相は特に米国やインドなどを挙げましたが、日本との結束が強化される可能性もあります。

Q EEA加盟国の国籍保持者との結婚により、英国に滞在している日本人は、今後、どのような決断を迫られる可能性がある?

欧州経済地域(EEA) 国籍者の配偶者を持ち、英国に居住する日本人はレジデンス・カード、あるいは永住権カードの申請をできるだけ早く行い、英国居住権の正式な証明ができるよう処置をとることをおすすめします。
今後、居住資格の条件がどのように変更するかは予測が困難なものの、このような処置をとり、長期の居住資格を現時点で保護することが重要であると思われます。

Q ブレグジットのおかげで日英の貿易協定が結ばれ、日本人に対するビザもとりやすくなる日がくる?

ブレグジット以外のエリアでは、Tier2就労ビザに関する変更がすでに実施されており、日本人が就労ビザを取得する事が一段と困難になりました。今年4月より、非 EEA 移民のスポンサーとなる雇用主には、経済面で下記のさらなる負担が加わることとなります。

a)健康保険付加料 (IHS)
  1人当たり年間 £200、今年4月3日より施行(家族を含む)
b)技能負担金(ISC)
  Tier2就労者1人当たり年間 £1,000(大・中型企業向け)、今年4月6日より施行

これらの変更により、大型企業が移民のスポンサーとなり、3年間有効のTier2(ICT)ビザを取得するには、通常のビザ料金に加え、先行して£3,600を支払う事が義務付けられることとなります。

上記に引続き、 UKVI が給与に含まれる手当の種類や額を給与全体額の一部として再検討する可能性もでてきました。これにより、場合によってはTier2(ICT)カテゴリにおけるビザの申請に影響が出るかもしれません。さらに、今年4月で Tier2(ICT)短期カテゴリは廃止になり、新規でICTビザを申請するには、Tier2長期カテゴリの最低給与基準の引き上げ額である£41,500に見合わなければなりません。
もう少し前向きな面では、ICT雇用者がビザを最長9年間延長する場合の最低給与基準額は引き下げられる予定です。新たな資格給与額は£120,000と予想されており、今年4月からの施行となる見込みです。また、Tier2(ICT)長期スタッフビザ取得において、新しいルートが追加されました。申請者の給与額が£73,900あるいはそれ以上であることを条件とし、申請以前の12ヵ月間の雇用は不必要となるため、既存の雇用者を英国に移動することを考慮する際、雇用主にはより選択肢が増えることになります。
Website: www.bakermckenzie.com/globalmigration
産経新聞社 ロンドン支局  岡部 伸氏

産経新聞社

二兎を追うメイ政権、損失を最小限にとどめられるか
ロンドン支局 岡部 伸氏

「円満離脱」もFTA結べるか注視

「移民の流入制限」と「単一市場への移動の自由」の「二兎」を追うメイ政権が「強硬離脱」に転じたのは、まず移民制限を確保し、交渉で実質的単一市場アクセスに近い条件を引き出す現実的な作戦に転じたためだ。
10兆円規模の投資をし、英国人を中心に14万人を雇用してきた日本の対英投資は、欧州単一市場に移動の自由があることが前提で、「強硬離脱」は、日本企業にも不利益が生じる。
EUを離脱すれば、英国で生産された商品に域外共通関税がかかる。日産やトヨタ、ホンダの3社は英国に工場を建て英国の自動車の半分以上を生産しているが、多くがEU各国に輸出しており、10%の関税がかかる。
離脱後に英国がEUと関税などの市場アクセスを自由なものにする包括的自由貿易協定(FTA)を結べるかどうかがカギだ。スイスやカナダとの間で先例があるが、EU側は現時点で容易に応じない方針だ。しかし、トランプ米大統領が英国とのFTA交渉優先を表明したことが追い風となる可能性もある。
そもそもEUにも通商貿易で英国との関係維持のメリットは少なくない。いやドイツやスペインなど対英貿易黒字国のEUこそ、域外共通関税がかかるとデメリットが大きい。最終局面で双方の損失を最小限にするFTAなどを結ぶ妥協に転じ、「円満離脱」する可能性も十分ある。したがって日本企業への影響は英国とEUの離脱交渉の行方を注視する必要があるといえる。
日本経済新聞社 欧州総局長  大林 尚氏

日本経済新聞社

英経済を左右する「対外関係」、どれだけ深化させられるか
欧州総局長 大林 尚氏

ブレグジットが日系企業に及ぼす影響

昨年6月に英有権者がブレグジットを選択したあとも、日系企業の対英投資は活発だ。孫正義ソフトバンク社長による半導体設計会社「アーム・ホールディングス」の買収(発表時の外為相場でおよそ3兆3000億円)が典型だが、これほど派手な案件でなくても民間資金は英国へ流れている。カルロス・ゴーン日産自動車社長はメイ首相に直談判し「ブレグジットによる懸案事項を解決した」と、小紙「私の履歴書」で語っている。不確実性を警戒しながらも、英経済が底堅く推移するという見通しがあるからこそお金を投じているわけだ。儲けを追求しつつフェア精神を大切にする日系企業は、英政府・経済界に歓迎されている。
私はブレグジット後の日英関係について、どちらかというと楽観している。もちろんメイ氏が宣言したEU単一市場からの完全な脱退は、英国を拠点とする日系企業や英国に暮らす日本人に欧州の窓口としての英国の機能が弱まる不利益をもたらす。モノとサービス、お金、そして人が自由に行き来する利点を手放すのだから影響は避けられまい。
一方、企業は現在地の居心地に悪さを感じるようになれば、より快適な地に自由に移動できる。グローバリゼーションの深化によってこの動きは個々人にも広がっている。それが現実になれば英経済には打撃だが、どの国にとっても栄枯盛衰はつきもの。米国や英連邦の国・地域、さらには中国などとの関係どこまで深化させられるかが、この先数十年の英経済を左右するだろう。

これだけは知っておきたい!ブレグジットの基礎用語

1 ブレグジット(Brexit)とは?

英国のEU離脱のニュースでおなじみになったこの言葉は、「Britain=英国」「exit=出る」との造語。「ハード・ブレグジット」とは「強硬離脱」とも訳され、英国が移民の受け入れ制限を最優先して、EUの単一市場へのアクセスを失うことを覚悟でEU離脱交渉を行うこと。これに対し、英国がEU離脱において、欧州の単一市場へのアクセスを確保することをめざす場合は「ソフト・ブレグジット」と呼ぶ。

2 リスボン条約第50条(アーティクル50)とは?

1952年に創設された「欧州石炭鉄鋼共同体」(ECSC)、58年発足の「欧州経済共同体」(EEC)と「欧州原子力共同体」(EURATOM)の3つの共同体がまとめられ、67年、「欧州共同体」(ECs)が誕生。さらに、93年にはEU(European Union)が生まれるに至った。
しかし、このEUの憲法を制定するための条約はフランスとオランダでは国民投票により批准が拒否されるなど、なかなかまとまらず、幾多の修正を経て、2007年、「欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約Treaty of Lisbon amending the Treaty on European Union and the Treaty establishing the European Community」としてようやく調印が行われた(09年12月に発効)。
この新しい基本条約内で、加盟国の離脱について手続きを定めているのが第50条、「アーティクル50(Article 50)」だ。
これによると、全ての加盟国は憲法上の要件に従って離脱を決定でき、離脱に向けた手続きは、当該国が欧州理事会(EUの最高協議機関)に離脱を通告することでスタート。欧州理事会への通告後、離脱する国はEUと脱退協定締結のための交渉を開始。脱退協定が発効する日から、EU法は離脱国に適用されなくなるが、それまでは加盟国としての権利・義務がある。ただ、離脱国とEUの交渉が難航し、脱退協定が締結できなかった場合、離脱通告から2年でEU法が適用されなくなる(全ての加盟国が同意すれば、この期間は延長できる)。
英国はまもなく脱退通告を行うと見られている。

3 EEA(European Economic Area「欧州経済領域」)とは?

EEAは、EUの28ヵ国にアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを加えたもの。なお、現在のEU加盟国は次のとおり(カッコ内の数字は、欧州の共同体への加盟年を示す)。
オーストリア(1995)/ベルギー(1958)/ブルガリア(2007)/クロアチア(2013)/キプロス(2004)/チェコ共和国(2004)/デンマーク(1973)/エストニア(2004)/フィンランド(1995)/フランス(1958)/ドイツ(1958)/ギリシャ(1981)/ハンガリー(2004)/アイルランド(1973)/イタリア(1958)/ラトヴィア(2004)/リトアニア(2004)/ルクセンブルク(1958)/マルタ(2004)/オランダ(1958)/ポーランド(2004)/ポルトガル(1986)/ルーマニア(2007)/スロバキア(2004)/スロベニア(2004)/スペイン(1986)/スウェーデン(1995)/英国 (1973)
 

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無敵艦隊、壊滅への道

超大国スペインと弱小国イングランドの
『激突までの道のり(前編)』 『激突の瞬間(後編)』

写真で旅するロンドン @journey.london


2017年 07月 20日

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