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都会で得られる最高の安らぎ

木登り

■新手のエクササイズやメディケーションでもなければ、冒険好きな人々へのマニュアルでもない。発売後、多くのメディアで取り上げられた話題の大人向け木登りガイド『The Tree Climber's Guide』。本書に触発された人々が、さまざまな場所で木登りを楽しんでいるようだ。

2016年5月5日 No.931

子供の頃きっと誰もが一度は楽しんだ木登り。筆者も実家の近くにあったお気に入りの木を思い出し、懐かしさがこみ上げたが、大人になってから木登りをしたことはあっただろうか。
子供時代を思い出すと同時に、「大人向けの木登りガイド」と聞いて、大いに好奇心をかきたてられたのが、4月に発売されたばかりの『The Tree Climber's Guide: Adventures in the Urban Canopy』だ。著者のジャック・クック氏は数年前、リージェンツ・パークに隣接するオフィスの天窓から見えた「緑の海」に、「登ってみたい」という衝動に駆られて以来、時に公園で、時に墓地で、時に歩道で、犬に吠えられ、人々の好奇の目にさらされながらも、木登りに魅せられていったのだという。

▲著者は日本史を学び、日系の慈善団体に勤めていた、ジャック・クック氏。「The Crow's Nest カラスの巣」、「The Granny Pine おばあちゃん松」など、ロンドンにある特徴的な80の木に愛称を付け、イラストレーターであるクック氏の夫人の描く美しい挿絵とともに紹介されている。

▲先進国の中でも群を抜いて緑地面積の広いロンドンは大木の宝庫。樹齢数百年はあろうかと思われる木が無数にはえている。すぐにお気に入りの『木登りの木』が見つかるはず。

クック氏がウェブサイト(www.jjcooke.com)で公開している動画では、ジーンズにセーターといった普段着で、驚くべき高さまでスイスイと木を登っていく。もちろん命綱やヘルメットは装着しない。まさに無邪気に木登りを楽しむ身軽な子供のよう。そんな動画や写真を見ていたら、いてもたってもいられなくなり、ある晴れた日、大都会に広がる原生林、ハムステッド・ヒースに出かけてみることにした。
「木登りをする」という目的を持って森の中に足を踏み入れると、いつもの風景も違って見える。足をかけるのにぴったりのコブを持った木、低い位置から枝分かれしている木など、いつしか「理想の木」を探すのに夢中になっていた。
登りやすそうな木を見つけ、早速足をかけてみる。「木登りをするのに素足に勝るものはない」というクック氏の言葉を忘れ、ゴム底の靴で登り始めると、足を滑らせてしまった。靴を脱ぎ、「登りよりも難しいのは下り。登ったルートを忘れず同じルートで下ること」という、もうひとつのアドバイスを念頭におき、手を擦りむき、木にへばりつきながら、2メートルほどの高さまで登ってみる。新芽の息吹を間近に、野太い大木に抱かれると、自然との一体感が強く感じられた。「童心に返って楽しむ」というよりも、都会生活の息苦しさの中で、日々の忙しさに追われていた今の自分に必要な『リセットの時間』だったのだと気づく。
木の上での時間を満喫した後、登りと同じルートで下ってみるも、「あれ? さっきはこのルートで登れたのに」と、確かに下りの方が難しい。冷や汗をかきつつ、何とか木を下りると、それはそれで無事地上に降りられた安心感を得られた。
ちなみにハイドパークやリージェンツ・パークなどを管轄する「The Royal Parks」は、「木に登ることは許可しない」との規定を定めているので注意。また、「たかが木登り」と高を括ってはいけない。落下の危険を伴うので、決して無理をしない、日中の明るい時間に複数人で出かけるなどの危機管理は必須。それらを心得た上で、まずは木探しがてら出かけてみては?


(写真/M.Nathan、文/ネイサン弘子)

 

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